小説4

□森田と岡崎17
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岡崎のキスはいつも、丁寧だ。こちらまで優しい気持ちにしてくれる。

裸の岡崎の背中は、すべすべしていて温かい。岡崎にキスをされながら、また少しずつ、我を忘れていく。

「ケツ触って」

岡崎が言うと多少下品な言葉でも滑らかに聞こえる気がする。
両手を後ろに回して、大きく揉む。

「…あぁ…」

岡崎の口から漏れる小さな声。
その髪は、洗いたてでいい香りがした。

「濡れてる」
「え?」
「髪。…まだ、濡れてる」

そっと頭を撫でると、岡崎がホッとしたような顔をした。

「そんなのすぐ乾くよ。…焦った。女になったかと思った。こわ」

意味がわからなかったので、とりあえず耳をふにふにとつまんでみる。

「ん…ぅ…」

目を閉じた岡崎にキスをして抱き締めた。

「寒くない?」
「全然。…あつい」

あつい、と言いながら、微かに股間を擦り合わせられて腰が引ける。

「あ……」
「お、岡崎さん…」
「抱いて」
「抱く…」
「んふふ…抱く?」
「…はい…」

かわいいね、森田さん、と言って、岡崎がぎゅうと抱きついてきた。
この世の中で一番セクシーな人が目の前にいると思った。

自分の布団に寝かせると、岡崎が潤んだ瞳で見上げてくる。

「森田さんも服脱いで」
「あ、あぁ」
「服着てる森田さんに犯されるのもいいか」

柔らかい顔で「犯す」という表現を使う岡崎にびっくりしてしまう。

「そんな、ひどいことは、しない、犯すとか、しないよ」
「ああ…うん…いいの、そうだね、無理矢理しないもんね」
「岡崎さん、……」

好きとか愛しているとか、そういう言葉で、果たしてこの気持ちを伝えることができるのだろうか。
この気持ちは、なんと表現すればしっくりくるのだろう。

言葉が足りない。全然、足りない。



首筋をゆっくり舐める。
暑い、と言った岡崎の肌は少し塩辛い。
すべらかで、少しずつ上下する胸元は驚くほど平らだ。

俺は少し迷って、部屋着を脱ぐのをやめた。

岡崎に言われてバッグの中を探すと、ローションとコンドームが出てきた。
それを手に固まりかける。岡崎が少し笑いながらそっと取り上げて、俺がするから大丈夫だよ、と言った。

ごくりと喉が鳴って、そのまま岡崎の体に手を這わせる。

岡崎の優しさには際限がない。でもしつこくなく、さっぱりして、俺は岡崎の好きな清涼飲料を思い浮かべる。
日に何度も、それに救われる自分がいる。

少し手を動かすだけで岡崎はひくひくと体を震わせる。口から漏れる吐息と声に、自分の体が熱くなっていく。

触れながら、自分だけのものにしたいという邪な欲望と、そんなことはおこがましい、いやらしいことなどしないでただずっとこの人の綺麗な体を見ていたいという宗教じみた願いがせめぎあって、心が熱くなったり冷静になったりと忙しい。

それが動きにも出ていたのか、時折岡崎が、ここに触って、ここを舐めて、と優しく声をかけてくる。
それに救われながら、自分がその通りに動いて、岡崎が恥ずかしそうに顔を背け、声を出すのを見ていると、なんだかおかしくなりそうだった。

ならすからちょっと待って、と岡崎が苦しげに言い、俺は少しだけ体を離してそれを見ていた。

ローションを手に取った岡崎は、後ろに手を回してくちゅりと音をたて、艶めいた表情を浮かべる。
挿入の準備をしているらしいと気づいた時には、岡崎の手が俺の部屋着のズボンにかかっていた。

膝までパンツごと引き下ろされて、反応していた俺に、岡崎が丁寧にコンドームを装着する。

仰向けで少し脚を開いた岡崎に重なり、濡らされたそこに自分をあてがう。

少し入ると、岡崎がぎゅっと目を瞑った。くじけそうになるのを、目を閉じたままの岡崎に縋られて止められる。

やめないで、全部いれて、奥まで、と言い、岡崎はひとつ、息をゆっくり吐いた。
苦しい思いをさせているのだろうか。
自分の体のせいで。
以前の人もそうだった。

と、意識が他に行きそうになるのを振り払う。キスをして、舌を絡めながら腰を少しずつ進めた。
岡崎の呼吸は荒く、愛しい声が混じる。



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