終焉ノ栞
□『赤(青)いレインコート』
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※この物語は以前『怪談新○袋』で放送されていた話のパロディです。
『赤(青)いレインコート』
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ジュワ〜〜、ジュッジュッジュッ〜〜〜――
「うぅぅわぁ〜!! すっごく美味しそうVv」
そう言って一人の女性がまだかまだかと、まるで仔犬が尻尾を振りまくってるが如く焜炉(こんろ)の上を踊るフライパンの中身を覗き込んで来る。
「まだ駄目だって。 もう一寸待って。」
そしてどうにか摘み食いが出来ないかと出してくる女性の手を、部屋の主である一人の男性はやんわりと、「出来れば食事が出来るように準備してもらえると助かるな〜」と栗色の猫っ毛をフワフワさせながら宥(なだ)めすかす。
「はぁ〜いVv」と女性は名残惜しそうにしながらもお願いされた通りに少し散らかっているリビングを片付けに行く。
その際に女性は、栗毛の男性――もといC太の頬へとその真っ赤な唇をかすめて行く。
イタズラ大成功と張りに女性はクスクスと悪戯っ子のように、しかしどこか妖艶めいた女豹のように微笑みながら‥。
そして少し呆然としていたC太は漸く覚醒し、キスを受けた頬へと手を伸ばす。
そこには血のように真っ赤な口紅がべっとりと付着していた。
指に付着した口紅にC太はどことなく、嫌悪感が沸き起こってくる。
そしてC太は殆ど無意識にシンクに備え付けられている蛇口を捻り、頬と指に付着する口紅をお湯で流す。
別に女の子は嫌いではないと思うのだ。
可愛い物が好きだとか。
はにかむ姿だとか。