MAIN 2
□一ヶ月記念日…忘れてない?
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「…やっぱり、憶えてないのかなぁ」
茶葉がガラスのポットの中で踊っているのを見つめながら、ぽつりと呟いた。
「あーぁ…」
藍は紅茶をカップに注ぐ。
湯気と共に甘い香りが広がる。
なんだか、今の心の中のようだ。
今日は付き合って一ヶ月の記念日なのに、アードライの反応は特になし。
曇った心を抱えていても、一ヶ月を迎えた嬉しさもある。
「ちょっと、複雑…」
ソーサーにカップを載せて、トレイの上に置く。
「よし…笑顔、笑顔!」
深呼吸をしてアードライの部屋に向かう。
「お待たせ!」
藍はアードライの部屋に入って、デスクに歩く。
彼は相変わらず書類とにらめっこをしていた。
「はい、どうぞ。
あんまり頑張りすぎたら、体、壊しちゃうから気をつけてね。
毎日頑張り続けているのを見てたら、心配になっちゃう」
「ありがとう、
私なら心配ない。
お前が淹れてくれる茶と…、
こうして過ごす時間があれば、な」
仕事に区切りがついたのか、藍の手をそっと握る。