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□アードライ 長編小説・第一幕
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第一幕

「戦闘開始、後方は裏を固めろ。

他は私に続け」


緊張感の走る戦場に、私は身を投じていた。

元々貴族だった私は、没落してしまってから、

カルルスタイン機関に入り訓練を積んだ。

これから乗り込む建物に住んでいるのは、

ドルシアに反旗を翻そうとしている議員の家だ。

建物の中に突入する。


「動くな!」


アードライはドアの向こうに居た娘と母親に銃を向けた。


「お願い、この子だけは、助けて」


母親が懇願する。

アードライはこの親子に危害を与えるなと命じて、

部下たちに建物内の主を捕らえに行かせた。


「…年は?」


娘に尋ねる。


「17…」


震える声で答えた娘を見て、アードライは息をついた。

まだ17歳。

相変わらず、こういうのには、弱い。


「お前の身柄は私が預かる。

心配するな、悪いようにはしない」


怯えている娘から視線を逸らすと、

傍に居た部下に母親を拘束するように命じた。


「連れて行け」

「いや、やめて、お母さま!」


母親は大人しく従うが、娘が反抗する。

駆け寄ろうとする娘をアードライは羽交い絞めにして止めた。

そんな娘に母親は言った。


「あなたは、生きて」


母親が連れて行かれてから、弾丸の音が遠くで響いて、

少し経ってから主を捕らえたとの連絡が入った。

それはつまり、娘の父親を捕らえたということだ。


「行くぞ」


呆然とする娘の腕を引いて、建物から出る。
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