MAIN 2
□アードライ 長編小説・第二幕
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第二幕
次の日。
仕事の区切りの良いところで切り上げて、収容された娘の元に急いだ。
アードライが部屋に着くと、困ったように覗き窓から娘を見る部下がいた。
聞けば、朝食も昼食も手をつけないらしい。
アードライはノックをして、鍵を開けて、扉を開いた。
「入るぞ」
一言告げるが、返事は無い。
部屋のテーブルに置かれた食事のトレイを見て、息をつく。
「何も食べていないのか」
ベッドに座って膝を抱えている娘に問う。
「…名前は?」
再び問うが、返事は無い。
アードライは娘の傍に近付いて、目線を合わせるように膝を折る。
「私の名前は、アードライ。
軍人だ、だが元々は貴族…没落貴族ということだ」
それを聞いた娘はぴくりと肩を動かす。
「私の家はすでに無い。
だが、今はここが、私の家だ」
アードライは根気強く話し続けた。
「お前の家を奪った者から言うのも…
どうかとは思ったが、
私は、私の出来る最善を、お前に尽くす。
だから、私を信じてくれないか」
それでも、反応は無かった。