MAIN 2

□エルエルフ 長編小説2・第二幕
1ページ/3ページ

第二幕

「それは第一資料室に。

そっちに税務の報告書は届いているか?

まだ?

遅すぎる、催促をかけろ。

遠慮は要らない」


エルエルフは相変わらずの多忙に追われていた。


「総理に次のスケジュールを伝えてくれ。

国際会議だが、俺は行けそうにない。

後から追うが…。

それまで代わりを。

人選は任せる」


彼の仕事部屋は別にあるのだが、いちいち行き来するのが面倒で、

仮のデスクを置いて、仕事をしている。

流石にパソコンへの打ち込みは

常人には考えられないスピードだが、

それでも間に合わないところを見ると、

多忙極まれりということか。


「…」


海外に送るためのビジネス文書を打っている最中に、

藍のことをふと思い出す。

儀礼的な挨拶を、機械のように打ち込みながら、

あの日に飲んだ紅茶の味が、懐かしく思えてしまった。

そういえば、次は俺から誘うと約束していた。

約束は守らねばならない。

さて、今の仕事をどう片付けたら、

時間を作れるだろうか。

あの時の休日は偶然に出来たもので、

普段の彼にはそんな暇はない。


「帰る家に居たら、無駄は無くなるんだがな」


そう呟いて、思い直す。

それは彼女と生活を共にするということだ。

慌てて脳内からおかしな考えを排除した。
次へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ