MAIN 2
□アードライ 長編小説・第二幕
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アードライは立ち上がってトレイを持とうとする。
そのとき、小さな声が聞こえた。
「…藍」
「なんだ?」
アードライは娘の方を見る。
ゆっくりと顔を上げて、喉に力を込める。
「名前は、藍」
今度はしっかりと聞き取れた。
アードライは微笑して、娘…藍の頭に手を置いた。
「ありがとう」
そう言うと藍は続けて言った。
「完全に、信じたわけじゃ、無い。
でも、信じたいと思った。
それだけよ」
凛とした響き。
顔色が悪くても、瞳の光は消えていない。
「あぁ、構わない」
彼女の瞳の光が、
私の瞳を射抜いた気がした。