☆本編☆
□第三話:夏男誕生
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〜前回までのあらすじ〜
ギレンジャーとして近藤サーカス団「ユートピア」で働くかを迷っていたいるかであったが、人々の平和を守りたいと思い、ついに「ユートピア」で働き、ギレンジャーとしての仕事に専念することを決めた。
そして近藤局長はもう一人のギレンジャーが、菊池夏次郎という名前であることを思い出していたのであった。
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「どうやら敵は、ギレンジャーがどこにいるのかを探っているようだ。
号くんと話し合い、全員がユートピアにいるのは危険なのではないかということになったので、号くんにはひとまず引き続き消防士として働いてもらうことになった」
その日号、いるか、光子は近藤局長とその秘書大奥静香に呼ばれていた。
「それから、皆さんはご自分がギレンジャーであることは一切口外しないでください」
静香は無表情のまま淡々と述べた。
「静香さん、今日はやけに機嫌悪そうじゃない?」
光子はいるかにだけ聞こえるようにそっと声を掛ける。
「…忙しいんじゃないかしら」
いるかも冷たい静香の表情を感じていながらも、光子をなだめるように言った。
そんな二人のやり取りを、号はちらりと横目で見る。
光子の言っていることが、あながちウソではないことが、彼には分っていた。
静香としては号が消防士を続けることは納得できないのである。
ギレンジャーとして戦うのであれば、常に連絡が取れるよう、「ユートピア」に勤務して欲しいのだ。
しかしいるかがここで働き始めると決めたためそれ以上のことは言えず、認めざるを得ない状況にいら立っているのだろう。
「それじゃあ、光子くんには、すぐにでも菊池夏次郎くんと接触してもらいたい」
「はい、団長」
光子は団長から菊池夏次郎という人物のプロフールなどの書類を受け取った。
「光子だけで大丈夫なのか?」
「光子くんはこう見えて、情報収集や交渉能力に長けているんだ。大丈夫、心配ない」
団長は自慢げにそう言って、誇らしげに光子を見た。
「あら、号は私のことを心配してくれてるのね」
光子はわざとからかうように号に言う。
「うるさい。そんなんじゃない」
号は照れて顔をそむける。
光子は号が照れるのを分かっていて、わざとからかいたくなってしまうのだ。
「それじゃあ、光子ちゃん、よろしくね」
「分かってるわいるか!いるかはゾウのアネンちゃんと仲良くね!」
そういって、光子は団長から受け取った書類をピラピラと振りながら部屋を出て行った。