☆本編☆
□第四話:二重人格の医者
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〜前回までのあらすじ〜
近藤団長の夢に出てきた菊池夏次郎という名前を手がかりに、ギブルーとの接触に成功した号といるか。
そしてついに、ギレンジャーは4人となった。
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その日光子はバイクに乗ってユートピアへと急いでいた。
今日は朝7:00から、いるかがゾウのアネンと共に新しい技を練習すると言っていたので、光子はそれを見たかったのである。
赤信号でバイクを止めると、ふと違和感に襲われた。
「何あれ…」
まだ6:30になろうとしている早朝の商店街に、長蛇の列ができているのだ。
その先にあるのは有名な飲食店ではない。
歯医者であった。
「いるかって、本当にすごいのね…。」
光子は感心しながらいるかとアネンを見つめていた。
「アネンを手懐けるのに、あのジェーンさんだって3か月はかかったんだよ?」
「ふふ…」
いるかは事もなげにアネンを操っている。
それも、強制的な感じは一切せず、光子にはアネンが楽しんでいるようにも見えた。
「光子ちゃんもやってみる?」
「無理無理!私は見てるだけでいいから。いるか、練習に専念して!」
「ありがとう。じゃあ、あっちにいる人と会話でもしてあげて」
「えっ?」
光子がいるかに言われて振り向くと、ドアのそばの壁に腕を組んでこちらを見つめている号と目があった。
「あれー?なんで号がいるの?」
光子は号のそばに駆け寄った。
「…なんで光子がいるんだよ」
「もしかして、私お邪魔だったかしら…?」
光子はにやにやしながら号の顔を覗き込んだ。
「そんなんじゃねぇよ。俺はいつも出勤前にユートピアに顔出してるんだ」
「なーんだ。いるかに会いに来てたわけじゃないのね」
光子は笑いながらも、号のそんなさりげない真面目さが好きだった。
「そういえばね、今日変なもの見ちゃった」
「変なもの?」
いるかとアネンの練習を見ながら、光子は号に話しかける。
「歯医者さんにね、行列ができてた」
「ふーん」
「ふーん、って!」
そっけない号の返事に光子は顔を膨らませる。
「号はおかしいな、って思わないの?こんな朝早くから、歯医者さんに並ぶ人なんて普通いる?」
「どこの歯医者だよ」
「商店街の近く」
「…俺の消防署の近くだな」
「じゃあ、号がそこ通る時、注意して見ておいてね」
「分かった分かった」
適当な号の態度に、光子は納得いかなそうに睨み返した。
「そろそろ俺は仕事に行ってくる」
「行ってらっしゃい!いるかに挨拶していかなくていいの?」
「…じゃあな」
「もー照れ屋さんなんだから…」
黙って出て行く号を見送って、光子も自分の演目である空中ブランコの支度をしに更衣室へと行く事にした。