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□勘違いと我慢とキスと
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『朝のHRが始まる前に屋上に行け。』
朝から何のメールだと思い通学中に確認するとそれは源田君からのものだった。
言われた通りに教室に一回より荷物を置き、そのまま屋上に向かう。
「うわ、風強い...」
屋上は思ったよりも風が強くうっかりしていたらスカートがめくれて下着が見えてしまいそうだった。
さて、屋上がなんなんだと想い辺りを見回したが人一人いない。
源田君からのメールの内容をもう1度確認するものの指示された内容はどこも間違っていない。
一体源田君は何の目的でこんなメールを送ったんだ。
そんな事をぶつぶつと思っていると、瞬間、ギギーと重たい音が背後から聞こえた。
「あ、源田君?このメール一体なんn...」
「は?源田?」
「え、あ...ふ、不動君。」
ドアの所に立っていたのは源田君ではない、不動君だった。
これは完全にやらかしてしまったと思いながらも状況確認をお互いすればどうやら不動君も源田君にはめられた様子。
「ったく、なんなんだよあいつ。」
文句を言っている不動君と屋上で2人きり。
嬉しいはずなんだけど、最近の不動君の私に対する態度を見ていればどうも素直に喜べない。
「はぁ、帰るか。」
「え?」
「え、って。もうすぐで朝のHR始まるけど。」
こういう時普通の恋人同士はどうなるんだろうか?
きっとどちらかがもと2人きりでいたいとか言い出してHRなんか余裕でさぼりとなるはずだ。
なのに、私達は...。この状況がやっぱり悲しくて寂しくて。
せっかく源田君がこういう機会を作ってくれたのになんてもったいない使い方をしてるんだと思うとなんだか視界がうっすらとぼやけてきた。
「不動君...。」
「ん?」
「不動君は、私の事嫌いなの?」
「は?」
若干俯き加減だった顔をあげて不動君の顔を見ればはっとしたような表情になった。
「お前、なに泣いて...、」
「だって、不動君が...不動君が...、」
泣いたらめんどくさいと思われて捨てられるかもしれない。
だから泣かない、って思っていた物のその決心はいとも簡単に崩れてしまった。
「最近すごい冷たいし。付き合ってるのになんにもなくって。我がままだって分かってるけどやっぱり寂しいんだよ...」
「そ、それは...」
罰の悪そうな表情になった不動君を見れば涙のせいなのか歪んで見えた。
「好きじゃないんだったらなんて告白オッケーしたの?なんであの時良いよって言ってくれたのさあ!」
だだをこねる私になんにも反応しない不動君。それでもなんだかさっきより2人の距離が縮んだ気がした。
「名前、その...悪かった。」
「え、」
「俺、まじ駄目だな。好きな女泣かせといて。」
「不動、君?」
「心配させて悪い。名前の事は嫌いじゃないぜ。むしろ好きだ。」
そう言って私の頭にポンっと手の平を置くと同時に急に身体がぐらっと揺れるように前に倒れた。
「え、ちょ、不動君!?」
「何かしたら、」
「え?」
「何かしたら嫌われると思った。こういう風に抱きしめたり、キスしたり。」
私の腰に回った手がさらに力を込めた。
それに比例するように私の身体と不動君の身体の距離が縮まる。
「一緒にいたら絶対に手出しちゃいそうで、我慢してた。やっぱり、好きな奴は大切にしてぇんだ。」
「不動君...」
名残惜しそうにお互いの身体を離せば今度は刻々と近づいていくお互いの唇。
小さなルップ音がしたのと同時に目を開ければどんどん頬に熱が帯びていくのが分かった。
「顔、真っ赤だぜ?」
「なっ、」
「ほんと、お前まじ可愛い。」
勘違いと我慢とキスと
(名前、覚悟しとけよ?)
(え?なにが??)
(いままで我慢してた分これから取り返す)
end