拝啓霧野蘭丸様
□第3章
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「もぉ最悪ぅ〜」
パンダ目は唇をとんがらせながらそう言うと、俺たちから離れて行った。
「えっと...、なんかすみません。」
「あ、大丈夫。」
いきなりの事だったから苗字先輩もきっと驚いただろう。
でも、優しい先輩の事だから
『大丈夫』
って言ってるのかもしれない。
そう考えると、なんだか少し申し訳ないな。
「私と当番やると週に2回になっちゃうけどいい?」
「全然大丈夫です。」
「なら良かった。当番出来ない日は言ってね。」
苗字先輩は俺に向かってそう言うと少し笑顔を見せた。
やっぱり純粋だ。
「えっと...、霧野、」
「あっ、蘭丸です。霧野蘭丸。」
「そうだった。ごめんね、私名前覚えるの苦手で。」
「いえ、気にしないでください。えっと、名前の方は名前でしたよね?」
「そうだよ。よろしくね霧野君。」
苗字先輩はまたあの笑顔を見せた。
「っ...。」
不覚にも少しドキっとしてしまったが直ぐに自分に言い聞かせる。
『苗字先輩は南沢さんの彼女だ。』
その事が頭の中をぐるぐると回った。