拝啓霧野蘭丸様

□第8章
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「もしかして南沢さんと...」


「違う!違うの!!」


震える声が図書室に響いた。
そんな明らか動揺されて否定されても困るのはこっちだ。


苗字先輩と南沢さんが...。


頭の中でベッドの上に重なる2人の姿が映し出される。


「っ、」


不覚にもそう言う事を想像してしまい自分がなさけなくなった。
それと同時に、思春期だな...と理解した。


「じゃあなんでこんな本を?」


「えっと...、保健の授業で習ってる所で、」


「嘘、付いてますよね?」


「そ、そんな事っ...!」



「目が泳いでます。」


この人は本当に分かりやすいと思う。
でもそう言う所が苗字先輩らしいと思うし、やっぱり純粋なんだなと俺に思わせた。


「あの、こんな事言うの少し恥かしいんですけど、」


「えっ?」


「その、少し聞いてもらえますか?」


「あ、うん、」


本をもう1度棚に戻し口を開く。


「実は南沢さんと苗字先輩が付き合ってるって知ってなんで?って思いました。」


俺がそういえば苗字先輩の顔が一瞬苦しそうになった。
そりゃそうだろうな。
自分が好きな人と付き合っている。それを疑問に思われたんだから。


「でもだんだん、苗字先輩に親しみを持つ様になってからなんで?じゃなくて、そのなんて言うか、許せない、って思う様になって。」


「えっ?」


「だ、だって俺思うんです。苗字先輩見たいな純粋で清楚な人には最もちゃんとした人の方が相応しいって。」


思わず声が少し大きくなる。
体温も上がった様な気がして熱い。
苗字先輩は苗字先輩でポカーンと表情をしてよく分からないと言う顔をしている。


なんだか一人で語ってしまった自分が恥ずかしいと思えて来た。
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