禁断の恋。

□1
1ページ/1ページ

東京都〇〇中学校の男性教師××が、生徒に性交渉を求めた罪により、昨日緊急逮捕されました。××容疑者は……


放課後の教室ってなんか好きだ。オレンジ色の光が差し込んできて気持ちがよい。
そんないい気分だったのだが、頭をかすめたのは今日の朝流れていたニュース。
そもそも教師が生徒と性交渉なんて馬鹿げた話だ。
教師にとったら若い子とやれると言うメリットはあるが、生徒には何らかのメリットがあるのだろうか?


「で、お前に…… 苗字?」


「……」


「おい、苗字」


「え、あ……はい」


不意に名前を呼ばれたと思えば目の前にいる担任の鬼道先生と目があった。
緑色の眼鏡が特徴的な鬼道先生は丈の長いスーツを身にまとい腕を組み私の前に立っている。
教師と生徒が性交渉をするという事は、つまり、鬼道先生と私がやると同じ事だ。
そう思うとなんだか変な気分になり思わず先生の視線から目を反らした。


「話、 聞いていたか?」


「い、いえ。すみません」


「ふぅ、まあいい。で、結果的に言うと苗字に学習委員会の委員長を頼みたいということなんだが」


「え、委員長、 ですか?」


おかしい、私達三年生は受験生な為委員会活動は免除されるはずだ。
なのに何故……そんな私を見かねた鬼道先生は一言、『推薦だ』と口にした。


「推薦?」


「あぁ、学習委員の責任者の先生直々にな。確か苗字は去年も学習委員の委員長だったらしいな」


「まぁ、そうですけど」


「今年は2年生に良い人材がいなかったらしい。 なに、お前なら受験と両立して出来だろ?」


「で、でも……」


そう言われてもやはり不安だ。少しの時間でも勉強に回さなければいけない年なのに委員長なんて出来るのだろうか?


「内申書」


「え?」


何を思ったのか、急に鬼道先生がボソっと呟く。


「確か苗字は帝国学園高等部が第一志望だったな?」


「はい」


この前の帰りのHRで志望校調査を行った事が脳裏をかすめた。
まだ四月だと言うのに志望校の事を本格的に決めろだなんて、流石帝国と言うべきであろうか?


「確かに、お前の学力なら入る事はそう難しくない。だが、内申書が良ければ推薦でいける可能性も増える」


「っ」


鬼道先生の言っている事は正しい。委員長をやれば内申書に書けて有利になる。
推薦で行けたらどんなに楽だろうか。


「推薦、取りたくないのか?」


「それは……」


そりゃ取れる物なら取りたいのが普通だろう。委員会の委員長を一つやった所で取れるかどうかは微妙な所だがやはりやるに超した事はないのかもしれない。


「総帥である俺が直々に推薦してやる事もない、そうすれば合格はほぼ百パーセントだ」


「鬼道先生が直々に?」


「あぁ、それだったらいいだろ?」


鬼道先生にそう言われればもう頷くしかなかった。それにこのまま言い合っていてもらちがあかない。
そう思い俯き加減で頷けば鬼道先生から小さく吐息が漏れた。


「じゃあ決まりだな。大丈夫、お前なら出来る」


「……」


本当に大丈夫だろうか?不安だけがつもる中ふいに鬼道先生に苗字、と名前を呼ばれた。
反射的に鬼道先生の顔を見れば先程とは違い柔らかい表情。
ポーカーフェイスが売りの鬼道先生がそんな表情をするなんて珍しい事もあるもんだ。


「先生?」


「もうすぐ日が落ちる、今日は送っててやる」


「え、でも」


「いいから、ほら来なさい」


「ちょ、鬼道先生……!」


思い浮かんだのはあのニュース。
まさか、とは思ったものの教師の車で帰るなんて身に危険を感じる。
このまま鬼道先生と……駄目だ。そんな事あっていいはずがない。
そう思えばやる事は一つ。手首を掴んでいる鬼道先生の手を思いっきり振り払うと『失礼します』とだけ言い全速力で走り学校を後にした。

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ