禁断の恋。
□2
1ページ/1ページ
次の日の放課後、私は一枚のプリントを持ち第三会議室の前にいた。鬼道先生から渡されたプリントだ。
昨日の事もありなるべく鬼道先生と話したくはなかったのだが、なんでも鬼道先生は昨日風邪をひいていたらしい。
それであの時も頭がぼやていたとかなんとか言っていた。
プリントを渡されたとき『悪いな、怖い思いをさせてしまって。』と言われた事を思い出す。
「苗字名前です。話し合いにきました」
「あぁ、苗字?」
そんな事よりも今日は委員会の委員長と責任者の先生とで話し合いがあるらしい。
会議室のドアを三回ノックしそう言えば中から男の人の声が聞こえた。
そう言えば責任者の先生って誰なんだろうか?ガチャ、とドアノブに手をかけドアを開けて中に入れば何回か見た事があるその姿。
「待ってたぞ、早速話し合い始めようか」
ワインレッドの奇麗な目、日焼けした肌、程よく筋肉の付いた身体。
「どうした?」
そしてなるべく関わりたくないのと同時に、この人には絶対に裏の顔がありそうだと思っていた人物。
やっぱり委員長なんて断っておくべきだったのかもしれない。
「責任者の先生って……佐久間先生、なんですか?」
「あぁ、一年間よろしくな」
神様って絶対にいないと思う、いたとしても少なくとも私には絶対に味方をしていない。
誰なんだ、日頃の行いがいいといい事があるなんて言った人物は。
それか、私はもしかすると日頃の行いが良くないのか?
「じゃあ、学習委員の活動は……」
佐久間次郎、三年部の先生で担当教科は理科。
女子曰く『あの時々見せる笑顔がいい!』とか、『色気あって大人って感じ!』とかなんとか……。
しかし彼女達と同じ女子であるはずの私にはどうも理解し難い。
「定期テストの予想問題作り……」
次々に話を進める佐久間先生。なんでよりによってこの人が責任者の先生なのだろうか?
うざい、いらいらする。生徒に良い顔していつもキャーキャー言われて。私はあんたのせいで理科の授業に集中出来ないんだよ。
あんたなんかクビになっちゃえば良いのに……
「それから3年生の受験対策……」
佐久間先生と話し合いをするくらいなら自分で委員会の計画を立てた方がましだ。
そう思い、ガタンとわざと大きな音を立てて椅子から立ち上がれば予想通りびっくりしている佐久間先生。
帰ります、と冷たく言い放ち荷物を持ってドアノブに手をかければ、待て、と背後から声がした。
「どっ、どうして帰ろうとする。まだ話し合いは終わってない」
「三年生は、学力調査、入試の過去問題を週に一度。予想問題作りは定期テストの1週間前」
言葉をたんたんと並べて行く私に慌てる佐久間先生。
そんな事で、慌てるな。と言ってやりたかったが今は他に言う事があってそっちを優先しなければならない。
「学習委員の仕事の内容は把握しています。私、去年も学習委員の委員長でしたので」
「そっそうらしいな、だから俺はお前を」
「推薦、したんですよね?」
ドアノブに手をかけたまま言う。会議室には緊張した空気が流れた。
「あぁ」
「話はそれだけですか?じゃあ、私帰ります」
「えっ!?ちょっ」
佐久間先生が言い終わらないうちにドアを開けて勢い良くしめればバタン、と大きな音が響いた。
「やってられるか」
閉めたドアに寄りかかりながらボソっそう声を漏らすとそのまま学校を後にする。
何時の間にか空はオレンジ色に染まり始めていた。