禁断の恋。

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ガッチャーンと大きな音がした。自分の上に何か重い物が倒れて来た。同時に背中に広まる大きな衝撃。


「んっ」


声を押し殺し痛みに耐える。大きな音がしたと思えばしーんと静まった理科室。
そして自分の上に覆い被さってる者が静かに動くたびにチャラチャラとガラスが落ちる音がした。


「だい、じょうぶか?」


「え……」


苦しそうなその表情をみればつられて心が苦しくなった。眉間に皺が寄る。


「良かった、間に合って」


それでも優しく私の上で微笑む。私の髪の毛に付いたであろうビーカーが割れ、飛び散ったガラスの破片。頭を撫でるように取り除いてくれるその行為がなんだかもどかしい。
分からなかった。あんなに冷たく当たったのになんで助けたのか。私は佐久間先生が分からない。


「佐久間、せんせ……?」


「怪我、ないか?」


やはり苦しそうで辛そうなその表情。きっとそれは私を庇ったせいで背中に沢山のビーカーが直撃したからだろう。
それに片方の腕だって痛いはずだ。倒れた時私の背中にした下敷き状態にされたのだから。


「……」


「苗字?」


「退いて、ください」


助けてくれた事は嬉しい。それでももし誰かにこの体勢を見られたらどうなる?あのニュースのようになるに決まっている。
そんなのごめんだ。男性教師が女子生徒に馬乗り状態なんて……何をどう勘違いされるか分かったもんじゃない。


「あ、わっ悪い」


「いえ」


私がそう言えばようやくこの状態の危険性に気がついたのか慌てて私の上から退いた。
恥ずかしさと罪悪感の余韻の中、唇をぎゅっと噛んだ。







カチャン、カチャン、と割れたビーカーの破片をほうきで集める音が五時間目の理科室に響いた。


「背中痛かっただろ? 大丈夫か?」


「はい」


自分の方が痛かったくせに。自分よりも他人を心配して……。
そうやって誰にでも優しい言葉をかけて、生徒や教師からも好かれてて……。
やっぱり、私が苦手なタイプだ。


「そうか、ならよかっ……苗字! それ!」


慌てる佐久間先生の視線の先には私の手首から出た赤いもの。
折角気がつかれないようにしてたのに……なんで気がついちゃったの?

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