禁断の恋。

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放課後、約束通り中間テストの予想問題作りをしに会議室へ向かう途中だった。
教室を出て階段を降り印刷室の前を通った所悪くその印刷室から出て来た佐久間先生とバッタリ……と言う訳だ。
更には、会議室まで一緒に行こう。という佐久間先生からの申し出。


最近は本当に運が悪い……。


「本当にごめんな、いきなり」


「いえ、大丈夫ですから」


その言葉、理科が終わった時にも聞いたんですけど。と言ってやろうとしたがそんな事を言った所でこの教師は特になにも感じないだろう。
言うだけ無駄……そう思い言葉にしない分心の中だけでもと思いのすごい不機嫌な声で言ってやった。


「ほら、苗字は特進クラスな訳だし勉強も大変なのに」


「だから大丈夫ですから」


この人は何回大丈夫、と言えば気が済むのだろうか?いい加減疲れるこっちの身にもなって欲しい。
しかしそんな私の願いも虚しく、勉強はどうだ?とか、行きたい高校は?などと。
よくもそこまで話せるなと思ったが、クラスのキャーキャー騒ぐ五月蝿い女子よりはマシなのかもしれない。


「そうか帝国学園高等部に行きたいのか……実は俺も帝国学園高等部だったんだ」


「え?」


一瞬佐久間先生の言葉に耳を疑う。佐久間先生が帝国学園高等部?
帝国学園高等部の偏差値は県内でもトップレベルであの鬼道先生が通った高校なのに?


「因みに鬼道もそうで、これでも俺、中学の頃はお前と同じ特進クラスだったしな」


「嘘……」


思わず口から漏れてしまった言葉に佐久間先生は若干苦笑い。
ただ……今はそんな事はどうでも良くて、このお人好しの佐久間先生があの帝国学園高等部と言う事が本当に驚きだ。
失礼かも知れないがもう少し頭はよろしくないと思っていたのが正直な所。


「まあ苗字は頭もいい。大丈夫、今からしっかりやっとけば絶対に受かる」


頭の上から降って来たその言葉に少しだけ心が落ち着く。
受験まではまだまだ時間はあるがやっぱりどこかで不安になっていた自分がいたのかもしれない。
らしくは無い、と思ったが……一応佐久間先生にありがとうございます。
と言ったが何故か緊張してしまい噛んでしまったのは目を瞑って欲しい。
そして斜め上を向けば驚いた表情から目を細めながら微笑み、あぁ。と言う佐久間先生。


まただ、佐久間先生の表情を見た途端の胸がちくりと痛んだのは。


もしかしたら段々佐久間先生に心を許している自分がいるのかもしれない。
別に許してもいいのだかどこかでそれを制御している自分。
駄目だ、駄目だと心の中で呟く。その時だった……


「なんであの二人が一緒に歩いてるの?」


後ろから聞こえた声。その声に身体がぴくりと反応した自分を酷く責めた……。

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