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□間接キスはブドウの味
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「名前先輩って、」


「うん?」


「彼氏いなそうですね。」


「ぶっ!!」


思わず飲んでいたジュースを吹きそうになる。
委員会の途中でいきなり何を言い出すかと思えば...。
年下のくせに生意気なっ。


「汚いですよ、先輩。」


「ゲホッ。」


しかも毒舌という。
というか汚いなんて酷すぎだろう。
それに吹きそうになったのは他の誰でもない成神君、君だからね??


「しかもジュースは校則違反ですよ?」


「ゲホッ、そっちだってヘッドホン付けてるじゃん。」


「俺はいいんです。」


勝ち誇ったようにそう言う成神君の表情を見てると負けた気分になってくる。
本当に生意気だ。
先輩という立場が凄く小さく見えるのは私だけだろうか??


というか、全然良くない。


「さっさと仕事して下さい。」


「そっ、そっちが話ふってきたんじゃん!!」


私がそう言うと、『関係ありません』と自信満々で言われた。
全くこの人と言う人は...。


「もういいよ、やれば良いんでしょ!?」


少しぶっきらぼうな言い方になってしまった事に関しては目をつむって欲しい。
でもこの場合、その様な言い方になってしまうのはしょうがないような...。


「名前先輩、」


「今度は何よ、」


大抵、成神君から話してくる場合はよろしくない事ばかりだ。
現にさっきだって軽くバカにされて終わったし。


「俺、喉乾きました」


「へっへぇ、そうなんだ。」


「下さいよ、」


「何を?」


「先輩のジュース。」


...えっ?


「ダメですか?」


「ちょっ、待って!!タンマ!タンマ!」


本気で待ってなんですけど。


成神君が喉乾いたのはよーく分かった。
でもなんで私のジュースを飲むのかが、なーんにも分からない。


だってさ、私のジュースを成神君が飲むと、


「間接キスになっちゃうよ?」


そう。なっちゃうんだよ??
いくら仲がいい後輩だとしても、ねぇ?


でも成神君は...


「先輩、そんな事気にするんですか?」


「へっ?」


「間接キス位痛くもかゆくもないじゃないですか。」


「いやいや!痛くもかゆくもあるよ!!」


必死になって成神君を説得しようと試みる。
というか、痛くもかゆくもない、って...。
成神君の神経は大丈夫だろうか?
きっと毎日大音量で曲を聴いてるからおかしくなったに違いない。


「せんぱーい!喉乾いたんですけど。」


「ちょっと考えさせて!!」


いくら間接キスだとしても、一応はキスの一種?というか仲間なんだし。
やっぱりまずいよね?


でも、年下に『そんな事気にするんですか?』なんて言われてしまったらなんかこっちが大人げないような気もする。


どうしよう...。


「先輩ー、」


「なっなに!?」


「このブドウジュース果汁100パーセントだけあって美味しいですね!」


「でしょー、やっぱり果汁100パーセンt...えっ?」


「どうしたんですか?」


「飲んだの!?」


「はいっ」


「......。」


やられた...。
空きをつかれてやられた...。



これで、私の『ファーストキス』ならぬ『ファースト間接キス』がっ!!


間接キスはブドウの味


(成神君のバカ!!)

(別にいいじゃないですか!あっ、今度はオレンジでお願いします!)
 

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