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□メールにはご注意を
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あっ、それ好き...。


5時間目の数学の授業中、斜め前の席の苗字名前を見ながらそう思う。
セミロングでツヤのある綺麗な髪の毛を何気なく耳にかける仕草がグッときた。


クラスでも割と可愛い方で、優しく、明るい苗字に俺は直ぐに惹かれ始めた。
最初は気になる程度だったが今は完璧に好きになっている。


丁度3ヶ月前、2年生になってようやく買ってもらえた俺の黒い携帯と、苗字の薄いピンクの携帯を触れさせて赤外線でメアドを交換した事は今でもしっかり覚えている。
あの時顔赤くなってなよな、苗字。


もしかして俺に気があるんじゃ?と思った事があるが、あまり男慣れしてない苗字の事だ。
ただ単に『男子とメアド交換』って言う事が恥ずかったに違いない。(現に佐久間と交換してる時も赤くなってたしな...。)


メールは基本俺から、で、たまにあっちから。
内容は、まぁくだらない事や部活の事。
特に何にも発展なし。
あっ、でもこの前やばかったかもな?
俺の頭の中にこの前苗字としたメールの内容が蘇った。








2日前の夜...。


やばい、緊張する。
送信ボタンを押す指が微かに震えた。
なんか俺、らしくないな。
送信する前にもう1度メールの内容を確認する。


ーーーーーーーーーーー

俺は苗字の
そう言う所好きだけど

ーーーーーーーーーーー


なんでも委員会が同じ男子生徒に
『お前って、純粋だよなー、つまんねぇ。』
って言われたらしい。
俺的には、そんな純粋な所も含めてドストライクなんだけどな。
いいと思わないか?純粋。


苗字からメールの返信が来てもう20分が経っている。
早くしないといけないのは分かってる。
もう1度内容を読み返す。


もういいや、どうなっても俺は知らん。


そんな捻くれた事を思いながらポチっと送信ボタンを押した。







まだか??
いつもならもう返信が来てもいい頃。
もしかして俺が返すの遅かったからか?
それとも...。
やっぱりあの内容はヤバかっただろうか??
送らなきゃ良かった、と軽く苦笑い。
宿題をしてても気になるのは携帯電話。
新着メールを何回も問い合わせ見たけど、反応なし。


再び携帯を開く。
受信ボックスを開き、今までの苗字とのメールのやりとりを見返す。


♪〜♪♪〜〜♪〜


「っ!!」


いきなり携帯の着信音が響く。
恥ずかしい事にかなりびっくりした。


画面に映し出されたのは苗字名前と言う名前。
さっきより緊張する。
OKボタンを押し内容を恐る恐る確認する。

ーーーーーーーーーーー

返信遅れてごめんね
お風呂入ってたんだ


ありがとう
なんか元気出た

ーーーーーーーーーーー

可愛らしい絵文字が2つついた女の子だな、って思わせるそんなメール。
っていうか、風呂か。
俺、かっこわるな...。


その後は普通の内容のメールをして、その日の俺の楽しみな時間はあっという間に終わった。








って何授業中に考えてるんだ。


気がつけば授業は残り少ない。
ノートを急いで取っているうちに、授業の終わりを告げるチャイムがなった。




「それでノートを貸してくれ、と?」


「あぁ、頼む鬼道。」


腕組みをしながら少し呆れた様子の鬼道。


「てか、源田...プッ!ハハッ」


「佐久間、笑うな!俺は必死だったんだ。」


そして鬼道の横で笑い、軽くバカにする佐久間。


「だってさ、ハハッ、」


「佐久間!!」


佐久間のやつ...。
俺の必死さが全く分かってないな。


「それにしても、面白ろそうじゃん?」


「なにが?」


少し悪戯っぽく笑う佐久間。
なんだか嫌な予感がする。


「だから、苗字とのメールだよ。俺も今夜送ってみようかな。」


「なっ!!」


メールにはご注意を


(苗字、佐久間からメール来たか?)

(うん、来たよ。なんか源田君が何とか、かんとか...。)

(気にしないで適当にあしらっといてくれ。)


その日の夜、俺が苗字に焦ってメールを送ったのは言うまでもない。
 

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