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□嘘別れ
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「あのさ、」
「ん?」
俺は今日、大好きな彼女に
「別れてくれない?」
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「えっ...。」
別れを告げられた。
「じゃ、そう言う事で、」
クルリと背を向けその場を去ろうとする名前。
「ちょっ、待てよ!」
その白くて細い手首を掴む。
「離してくれない?」
「その代わり理由を教えろ。」
分からなかった。
確かに告白したのは俺の方で、でも確実に両思いだった。
時々、名前からも好きだと言ってくれたし、キスだって受け入れてくれた。
なのに、どうして...?
「理由?」
「そうだ、どうしてなんだよ。」
「...飽きたから。」
「は?」
彼女の口から冷たく吐かれた疑わしい言葉。
「だから私、あんたに飽きたの。」
「なっ!どっどういう事だよ!!」
思わず声を上げてしまう。
「そのまんまの意味。じゃ、」
!!
その瞬間思いっきり手をほどかれた。
「名前...。」
何も言えなくなってしまった俺はただただそこに突っ立っているので精一杯だった。
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「もういいのか?」
「うん、」
目の前にいる幼馴染の幸次郎からの問いかけに小さく頷く。
「頑張ったな、」
刹那、安心出来る温もりが身体全身に伝わった。
幸次郎が私の背中に腕を回す。
「これで、良いんだよね?」
「あぁ、少しの辛抱だ。」
「影山さえ、あいつさえいなければっ...。」
涙を堪えそう言う言葉には酷く憎しみが込められていた。
そう、影山さえいなければ私と次郎はずっと一緒に笑っていたはずなのに...。
嘘をつくのは辛い。
それが好きな人なら尚更だ。
嘘別れ
(ごめんね、次郎)
(絶対に帰ってくるから)