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□恋読書
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「あ、」


「あっ...。」


偶然とはこういう事だろうか?
昼休み、借りていた本を返す為に図書室へ足を運んだ所、顔見知りの先輩...佐久間先輩に出会った。


「先輩、こんちは。」


「あぁ、苗字も本を返しに?」


私の手にある本に視線を送りそう訪ねる先輩。


「あ、はい。という事は先輩もですか?」


「まあな、ついでに1冊借りて来た所。」


「そうなんですか...ってあっ!」


思わず声をあげてしまう。
佐久間先輩の手には『赤の世界と青の世界』と書かれた本があって...。
それは運悪く、佐久間先輩と同じように、ついでに借りようと思っていた本だった。


「どうかしたか?」


「い、いえ...あの、なんでもないです。」


読みたかった...。
正直な所、物凄く読みたかった。
新作で人気のその本は、いつも誰かしらの手に渡っていて滅多に借りる事が出来ない。
図書委員の友達から『今日当たり借りれるかもしれない。』と言う情報が入り、私自身、かなり楽しみにしていた。


「もしかして...読みたかった?これ、」


私のそこ本に送る視線が熱過ぎたのか?
どちらにせよ、佐久間先輩に本音がばれてしまった。


「えっと、その...」


「そっか、ごめんな。譲ってあげたい気持ちはあるけど、実は俺も凄い読みたいんだ。」


「あ、いえ。気にしないで下さい。」


少し後悔の味はあるものの、相手は先輩だし無理に譲ってもらうのも悪い。
しょうがない...また機会を見計らって借りに来よう。


とりあえず、本を返さなければと思い、図書室の入り口で佐久間先輩と別れ、カウンターで本を返した。


やっぱり借りたかったな...。


そんな事を思いながら図書室で代わりの本を探すものの、特に読みたい本が無かった為図書室を後にする事にした。
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