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□確信犯
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行こう、そう言った南沢の声と言葉を思い出す。
数ヶ月前の体育祭の練習。
私は体を動かすのは好きだが何故だかシンプルな走る......
というものが大の苦手だった。
簡単な事だけに正直悔しい。
バスケやテニスなどの球技は好きでもあり得意なのだが不思議と苦手な陸上。


体育祭のクラス対抗リレーの練習に出たくないと保健室で拗ねていた私を連れ戻しにきたのは南沢だったのだ。


「出たくない」


「お前が出なきゃクラス対抗リレーの意味がねえだろ」


「だって苦手だし」


「じゃあ俺がフォローする。 ほら行こう」


そう言って手を差し出してくれたっけ......。
結局私はクラスにお世辞でも貢献出来たとは言えないが結果は1位と好成績で終わった。
まあ元々うちのクラスは三国や車田などサッカー部が集結してるからあたり前と言えばそうなる。


だが問題はそこじゃあない。
惚れてしまったのだ。誰にって?そりゃ南沢に。そう、あの南沢に。
サッカー部で成績優秀。んでもってかっこいい。
なんでよりによってあの時来たのが南沢だったんだ。
せめて車田や三国辺りなら私にも希望があったかもしれないと言うのに。
そう心の中でボソボソと呟いてぼーとしてれば背後に気配。


「苗字」


「ん?」

その気配の正体は紛れもなくあの南沢。
少しエロめのボイスで一発で分かった。


「あんま気にすんなよ」


「なにが?」


「リレーだよリレー、誰にだって不得意はあるからな」


「分かってるよ……ありがと」


私がそれだけ言うと少し笑顔を見せどこかへ行ってしまった南沢。
多分三国達の所だろう。


……それにしても。
心配されたら余計に気になっちゃじゃないか。


確信犯

きっとそれはアイツのこと

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