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□俺の本音
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「はいこれ、篤志の分ね。」


そう言って姉貴は俺に可愛らしいピンク色の小さな箱を渡した。にこにこして渡されたが俺はなんにも嬉しくなんてない。どうせこれは弟へ、という意味で渡したんだろ?今年は俺が受験だからなのかなんだか知んねーけど去年の袋からご丁寧に箱にしやがって。


「ん、サンキュー。」


なんて言える訳もなく、チョコの甘い香りがほんのりするリビングで姉貴にそっと微笑みかけてやりながらチョコその箱を受け取った。


「今年はね、篤志の好きなブラウニーにしたんだよ。お姉ちゃん頑張っちゃった。」


「へー、良く知ってんな。俺の好きなもん。」


「まあ、そりゃ兄弟だもん。当たり前でしょ?」


そう言うとまたにこにこしだす姉貴。素直に奇麗だと思えるがその笑顔を時々壊したくなる。弟の俺が好きだ、なんて言ったらどういう表情になるのか、いきなりキスしたらどうなるのか...正直な所見てみたい。


「分かってると思うけどさ、受験勉強ちゃんとやんなね?」


「やってる。」


「なんか自分のときより心配になってくるなあ...ねえ!どこか分かんない所とかない訳?お姉ちゃんが教えてあげる!!」


「は?そんなもんねえよ...ってうわっ!」


何がどうなったかなんて考えなくても何となく分かるけどこれはまずいような気がする。姉貴が勉強教えてあげるの勢いでソファに座っている俺の横に手を着いたまではよかった。そうそこまでは。運悪く床に俺がさっきまで解いていた数学のプリントが落ちていたのが悪いんだ。それにまたもや運悪く足を乗っけた姉貴。そうなれば起きる事は1つ。


「いたた...篤志!あんたね、プリントそこら辺に置いとくな!」


目の前には姉貴の顔。俺と同じ目の形をしているのを見るとやっぱり兄弟なんだなと実感する。いつの間にやら俺の方が大きくなった身体。柔らかそうな胸が俺の胸板に当たる。


「だいたい、何時も篤志は床に雑誌やチャンネルとかをね...ってちょ、聞いてんの?おい、馬鹿篤志!」


「あのさあ...、」


「なによ、お姉ちゃんに反抗するの?良い度胸じゃない。」


「ちげーよ、」


こいつの方が馬鹿なんじゃないかと思ったがそんな事を言ったらまじで殴られる。現にこの前受験勉強の夜食に食べたシュークリームがどうやら姉貴のだったらしく次の日腹に蹴りが入ってきそうになった。サッカー部で良かったと思ったのはこの時で、もし文化部なんかだったら間違いなく見事なクリーンヒットだったと思う。


「じゃあなによ?言って見なさいよ、どうせ後で泣くのは篤志の方だからね!」


「...胸。」


「は?」


「姉貴、胸おっきくなったな。何カップ?C?」


「な、な...なに言って...、」


自分から押し倒しといて何真っ赤になっているんだと突っ込みたいが、こんな状況滅多になれるもんじゃない。これを機に俺も一人の男と意識してもらわないとこれから色々困る。


「うわ、顔真っ赤。照れてやんの。」


「は?ち、違うし!」


「なあ、この状況興奮すんな、俺姉貴とだったらいいぜ?こういうの近親相姦って言うんだっけか?」


「あ、篤志...あんた何言って...、」


「......。」


「...っ。」


「...ぷ、なーんてな。」


「は?」


「いい加減降りろよ、重い。」


俺がそう言うとはっとしたようになった姉貴。慌てた様子で俺の上から降りると未だに赤いその顔。初めて見た、今までずっと一緒にいたけど姉貴のこういう表情を見るのは初めてだ。


「あ、ブラウニー後で食べる。」


「ね、ねえさっきの何よ。」


「さっきの?」


「だ、だからその...近親相姦とか私とだったらいいとか。」


「え?あぁ、それ?それは...、」


俺の本音


(じゃあ俺勉強やりたいからリビング入ってくんな。気が散る。)

(え?ちょ、本音!?は?え?)

(はいはい、じゃあな。)

(ちょ、あ、篤志!わわっ、むっ無理矢理リビングから追放すんな!)


弟のバレンタインはちょっぴり切なく複雑だ。
 

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