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□寂しいよ。
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「受験?」


唐揚げを取ろうとする手を止め姉さんにそう言えば、笑顔でこくんと頷いた。
あ、最後の唐揚げ姉さんに取られちゃった。


「でも僕たちが通ってる学校って中間一貫校だよね?」


「そうなんだけどさ、私高校は別の所にしようと思って。」


ガツン、と頭を殴られた様な気がした。
2つ上の姉さんと中学では1年しか一緒に通う事ができない。でも高校に入ればあともう1年プラスされる。
楽しみだったのに...姉さんと一緒の高校の制服着て一緒に帰りたかったのに。


「シュウはエレベーター式で高校行くんでしょ?いーなあ、楽で。」


「だ、だったら姉さんもそのまま行こうよ!」


最後の唐揚げを半分口にいれながらうーんとうなだれる姉さん。
お願いします、と心の底から願う気持ちで一杯だ。


「私の行きたい分野がね、その受験したい学校にあるの。だから、ね...」


「やだよ、絶対やだ。」


「シュウ...。」


「はっ、そうだ。じゃあ僕もその高校にするよ。」


「あー、その気持ちは嬉しいんだけど...女子高なんだ。そこ。」


本日2回目だ。ガツンと殴られた気がしたのは。
もう食事を取る気にもならなくて箸をテーブルに置く。
なんだか心に穴がポッカリと空いた気分になり自然と顔はその俯き置いた箸をじーっと見つめるだけとなってしまった。


「シュウ?もう食べないの?」


「......。」


「男の子は一杯食べないとダメだぞー、ほらあーんして。」


僕の気持ちも知らないで、勝手に別の高校受けるなんて言い出して。
それでも、あーんと言う言葉に反応してゆっくりと顔をあげる。
そうすれば笑顔の姉さんと目の前には姉さんの箸で摘ままれた食べかけの唐揚げ。


「シュウは唐揚げ好きだもんね。」


なんだか姉さんの笑顔に負けてしまいその唐揚げにパクリとかじりつく。
口の中にしょっぱいようなでもどこか和らい味が一気に広がった。


「美味しい?」


「...うん。」


「私の受験が終わったらさ、どこか遊び行こっか。」


「遊びに...?」


突然の姉さんのの提案に思わずきょとんとなる顔。いつぶりだろうか、姉さんと遊びに行くなんて。
僕がサッカーを始めてからはそんな事1回も出来なかったなあ...。


「そう!遊びにだよ、シュウ。どこか行きたい所ある?」


「えっと、んーとね。動物園とかあ、映画館もいいな。あとは...」


指をおりながら候補を挙げて行けば自然と口元が緩んで行くのが分かった。
さっきの事が嘘の様に心は晴れていた。


「ふふ、じゃあ全部行こう。」


「え?全部?」


「うん、全部。だから行きたい所決めといてね。」


ニコリとそう微笑まれればなんだかこそばゆい。
姉さんのその笑顔がくすぐったくて暖かいんだ。


「じゃあ私勉強してくるね。」


「うん、頑張ってね、姉さん。」


僕がそう言えば、ごちそうさま、と言い自分が食べた食器を台所へ置きリビングを出て行ってしまった。


寂しいよ。


(シュウ、私もシュウと同じ高校が良かったよ...)


リビングのドアの向こうで姉さんがそんな事を言っただなんて僕には知る由も無かった。

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