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□素直になれ
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塾からの帰り道。ひゅうっと、冷え込む身体を攻撃するかの様に風が吹いた。それと同時に縮こまる身体。
しかし、横に並んで一緒に帰っている倉間をちらっと見たが私程寒がってはいない様だ。
「寒くないの?」
「俺寒いの強いから。」
なんて羨ましいんだ、と思ったが「あ、でも暑いのは弱いかもな。」と付け足された。
てっきり、倉間は肌が茶色だから暑いのが強いんだと思っていた。
「ふーん、って言うかさっきの問題分かった?」
「どの問題だよ。」
「だからあの数学の関数のやつ。」
「あーあれこの前南沢さんに教えてもらったから分かった。」
倉間の口から出てきたその人物の名前にピクンと身体が反応した。
「南沢先輩に!?」
「そうだけど、なんか文句ある?」
「文句って言うか...いいなあ倉間。私も南沢先輩に勉強教えて欲しいよ。」
「自分で言えば?あの人、高校入ってから案外暇らしいし。」
「自分からなんて恥ずかしくて死ぬ。あー本当にかっこいいよね、南沢先輩。」
「...まあ、確かに。」
南沢先輩に勉強を教えてもらっているシーンを頭の中で想像...いや妄想してみる。
やばい、口が勝手に緩んで行く。最終的には倉間にキモいと言われてしまった。
「キモい言うな。」
「だって本当の事だし。」
「いいじゃん別に。好きな人の事考えてなにが悪い。」
「お前の場合は考え過ぎ。」
そう言い、歩くスピードを上げた倉間。なんかムカつくなあ、と思ってればいったん停止をしくるりとこちら側を向いてきた。
「なんで南沢さんが好きなわけ?」
「え...だって優しいしかっこいいし。」
「雷門高校受けるのも南沢さんと一緒の制服着るため?」
「そうだけど、って言うかさっきから何なの?」
「いや、別に...ただ。」
なんだか気まずい空気が2人の間に流れた。ひゅう、また風が吹いた。
「何?」
「ただ...なんかそう言うのムカつく。気に入らねえ。」
「は?」
「んじゃ、俺こっちだから。」
素直になれ
(なんなのよ、あいつ)