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3階建ての建物の中に入り先生たちに挨拶をしながらも急いで階段を最上階まで駆け上がる。
そのせいで髪が少し乱れてるとか、1人、少し浮いているとかなんて今は気にしている所じゃあない。
『Tclass』 ...そのプレートが掛かっている教室を目の前にしたところで深呼吸を1つ。
それから乱れていた髪もきちんと直した。
ゆっくりとドアを開ければいろいろな話し声が聞こえる。
そんな事に気を取られながらもなんとか席につき、今日やるワークを取り出し携帯をマナーモードにした。


「でもあそこはもっと右にパスだろ、」


「いや、あそこは辺見がもうちょとだけ...、」


「はぁ?俺のせいかよ!!」


教室の後ろの方から聞こえる会話を頑張って拾ってみる。
帝国学園っていったらあのお金持ちでサッカーの強い学校で。
最初は怖いって感じもあったけれどこの塾にはいって初めて少しだけ接してみたら意外と普通の中学生だった。


「辺見、声がでかい。」


「源田は少し引っ込んでてくれ。」


「そういう佐久間が引っ込んでろよ。」


「なんだと?デコ見!」


「あぁ!?なんだよペンギン男!!」


実際、こういう会話を聞いてれば帝国学園サッカー部が怖いなんて1つも思わないと思う。
塾に来てるのは源田君と辺見君と、そして佐久間君だけだから他の人は知らないけど。
でもきっといい人達なんだろうって事は予想がついた。


「席に着けー」


時計の長い針が12をさしたのとほぼ同時に先生が入ってきた。
少しざわつきながらも約20人位のほかの学校から来ている生徒も続々と席に着き始める。


「あれ?今日って数学だっけ?」


突然隣の席から声がすると思えば左目に眼帯をしたのが特徴な佐久間君がそんな質問を小声で投げかけてきた。
それだけで心臓がバクバクしてしまいなんとか恥ずかしさを押さえながら自分も小声で返事をする、が...


「え、あ、うん...」


なんともおかしな返事になってしまい余計に心臓が五月蝿く鳴った。


「あ、ごめん。他校なのにいきなりこんな事聞いちゃ嫌だよな。」


「う、ううん、大丈夫。」


否定するのに必死な私を見て佐久間君は奇麗に微笑み「そっか、なら良かった」と魅力的なハスキーボイスでそう言った。
いつからなんて覚えてないけど今が2月だから大体半年前から佐久間君を好きなんだと思う。
知っている事は名前と帝国学園でサッカー部って言う事。そして頭が良いって事。
でもそれは本人から聞いたんじゃなくて会話とか、言っちゃえば盗み聞きって感じで情報を得たという訳であって...。


「あのさ、」


「あ、なっなに?」


ワークp131を開け、先生からそう言われたときに不意にまた佐久間君から話しかけられた。


「あの、ワーク見せてもらっていいか?俺、忘れちゃって、」


「うっうん、いいよ。」


「佐久間、どうした?」


佐久間君の机と私の机をくっ付けようのした時だった。
その行為を不思議におもったのかなんかなのかはよく分からないがせん突然先生が不審に思ったのか声を掛けてきた。


「あ、いえ。あの、ワーク忘れちゃって。」


「忘れた!?佐久間、お前受験生なんだぞ?もっとその実感を持て。」


「すっすみません。」


「まぁ今回は大目に見る、苗字。」


「あ、はい。」


「佐久間に見せてやれ。」


「はっはい。」


先生にそう言われながらもくっ付けた佐久間君と私の机の真ん中になるようにワークを広げる。
問題はノートに書き写して行うためノートも広げる。
さすがにノートはあったようで表紙が青色のノートが佐久間君の机に広げられた。
そのまま授業はどんどん進んでいき最後の10分間で発展問題を解く事になったがなにしろ学校よりも塾の方が進んでいるため正直さっぱり分からない。
隣をちらっと見ればもう既に解き終わっている佐久間君。
さすが帝国だなと思いながら必死になって公式に当てはめたりいろいろと試行錯誤をしてみたがやっぱり分からないものは分からなかった。
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