give.
□29000hit
1ページ/2ページ
最近、すれ違いが多い気がする。
ふう、と紅茶を飲みながら小さい溜息をつけば1つの写真立てが目に入る。
誓います。とあの教会で2人で約束しあった日。どんなに幸せだったか。多分人生最大の幸せだ。
時刻は午前2時。あと数時間もすれば朝日が昇ってくる頃だろう。
でも、それでも私の旦那。吉良ヒロトは帰ってこない。
ここ1週間なんてまともに顔を見ていない。夜は勿論遅いし、朝だって睡眠時間が心配になってしまうくらい早く出て行く。
しかも会社に泊まる事もしばしば。
ご飯は大丈夫だろうか?もしかして浮気?ううん。ヒロトに限ってそんな事あるはずがない。
心配ばかりが積もり、それと同時に眠気が私を遅いもうすぐで夢の中へ引きずり込まれそうになった時だった。
ガチャン、と玄関の方でドアが開く音がする。一気に冷める眠気。心臓がドクンと高鳴った。
「ヒロト!」
子供のように急いで玄関へ向かえばそこには目を大きく見開いて驚いた表情のヒロト、私の旦那。
「名前!? まだ起きてたの?」
「うん、ずっと……待ってた」
玄関になっている私と頭一つ分とちょっと違うその身体に思わず身を預けてギュッと抱きつく。そうすれば抱きしめ返してくれるヒロト。求めていた温もりが一気に身体へ伝わった。
こういう時に少しもよろけないのは流石24歳、そして元サッカー部の若社長と言っておくべきか。
「ごめんね、最近新しいプロジェクトが始まって……名前と一緒にいれなくて」
「大、丈夫……。身体だけは気をつけて」
大丈夫、そんなの嘘だけどここで我慢して旦那の仕事を温かく見守るのも妻の仕事だと思う。
でも、今はもう少し我がままになってもいいのかもしれない。
「でもね、ヒロト」
「ん?」
「やっぱり……1週間はきついよ。すごく寂しかった」
語尾になるに連れて小さくなる声。今だけでもいいからヒロトに甘えたい……。
そんな欲望が一気に押し寄せる。
「俺も寂しかった。1週間がすごく長く感じたよ。名前、顔あげて」
「……」
ヒロトにそう言われ言われるがまま顔をあげれば少し微笑みながら私を優しく見下ろすその顔。
「名前……」
甘いスイートボイスでそう名前を呼ばれれば自然に目が閉じてしまうのはきっとしょうがない事。
そして数秒後に玄関に小さく響いたリップ音。
まるで媚薬が効いているかのように幸せに満ちる。
ヒロトと触れ合うひとときの時間が私にとっては癒しで、安らぎで……
これからもずっとこの幸せが続くように心の中で強く願った。