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□嘘涙
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「退いてください。」


「やだね。」


なんなんだ、なんなんだこの人は。
いきなり壁に押し付けられたと思えば顔が近づいてくる。退けと言えばいやと返ってくる。


「南沢先輩っ!」


「ばか、男の力には適わないっての。」


先輩の胸板を思いっきり押してみるがびくともしない。
それどころかニヤッと口角をあげて楽しむ様子の先輩。なんだか正直悔しい。
だからってここで諦めたら先輩に何をされるか分かったもんじゃない。


「名前、いい加減諦めな。」


「学校でなんて嫌です!南沢先輩のばか!歩く18禁!」


「ばか!?歩く18禁は認めるが俺は馬鹿じゃねえよ。」


あ、認めるんですか。
自分でもフェロモン出してるって気がついていたんですね。


「ほら、さっさと目閉じろ。キスできねえだろ?」


「いや、しなくて良いです。」


こうなったら意地でも目閉じてやるもんか!
そう決心し、目に力を入れ、なるべく瞬すり回数を少なくしてみる。


「ほら、いい加減にしねえとマジで襲うぞ。」


「......」


目がだんだん痛くなってきてもう南沢先輩の言葉なんかに返事をしてる余裕なんてなくなってしまった。
あれ?なんか、視界がぼやけてきたような。


「じゃあ遠慮なk...って名前!?」


「......」


「お前、なに泣いて、」


泣いてる?一瞬南沢先輩の言葉に疑問をもったがきっと目が乾いてしまったんだ。
そりゃずっと目を開けてたからな、涙ぐらいは普通の人だったら出てしまう。
でもさすがにもう我慢出来ない。とてつもなく目が痛いのだ。
もう先輩にキスされるのを覚悟して目を瞑れば溜まっていた涙がスーと頬を落ちてい感じが伝わってきた。


「先p...」


「ごめん...!」


「!?」


先輩、もう諦めます。と言おうとしたが何故か分からないけど南沢先輩の腕が私の背中に回っていた。
しかも先輩の顔は私の肩に埋められてて...。
これは一般的に言えば抱きつかれてる、と解釈しても良いのだろうか?


「え、っと...先輩?」


「本当にごめんな、名前が泣く程嫌だったなんて知らなくて、俺...。」


「あ、その...。」


違います、と言った方が良いのかもしれないが、もしそれを言ったらどうなるかなんて結果は見え見えだ。
直ぐにでも先輩からのキスが恐ろしい程大量に振ってくるだろう。
そんな事をされちゃあ、こっちの心が持たない、気絶してしまう。


「付き合うときお前の事大切にするって言ったのに。」


「南沢先輩...。」


私が先輩の名前を呼べばぎゅっと渡しを抱きしめる先輩の強さが増した。
苦しいとか、痛いとか、そんな事気にしてなんかられない。
普段あまりこういう事を言わない先輩の口から切なそうな言葉が出てるのだ。



「これからはもっと名前の事大切にするから、だから...、」


「私、南沢先輩じゃないと嫌です。」


「...名前?」


「こうやって抱きしめてもらうのも、キスしてもらうのも、付き合うのも...全部が先輩じゃないと嫌なんです。」


私も先輩と同じようにギュッとすればそれに答えるよう南沢先輩もさらにギュッとしてくれた。
こういう所好きだなぁなんて思ってれば校内に5時間目の予鈴がなる音が響き渡った。


「あ、先輩...予鈴。」


「あ、あぁ。名残惜しいけど放課後にな。」


少し寂しそうな表情をした先輩。やっぱりショックを受けているのだろうか?
これは、涙を流した意味をちゃんと言った方が良いのかもしれない。


嘘涙


(えっと、南沢先輩、じつは.........と言う事だったんです。)

(は?)

(ですから、あの涙は嫌っていう意味じゃなくて...。)

(名前、)

(あ、はい。)

(今から俺の家行くぞ。)

(え!?い、嫌ですっ!!)


放課後、私が南沢先輩にお持ち帰りされた事は言うまでもない。
 

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