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「苗字さん、」
「えっ?」
結局発展問題は解けないまま授業が終わってしまった。
先生にでも聞こうか、それとも学校でやるのを待つか...。
どちらにするか悩んでいるときにまたもや佐久間君に話しかけられた。
「さっきの発展問題解けてなかったよな?」
「うっうん。」
きっと笑われるに違いない。帝国学園は私立だし頭もいい。
普通の中学に通っている自分がその帝国に通っている佐久間君と塾で同じクラスっていうだけでもおかしいのに、さらに何回も話しかけられるなんて...。
そう思ったが次の佐久間君の口から出てきた言葉に一瞬心臓が止まりそうになった。
「俺で良かったら教えるけど。」
そしてその後に「ワークのお礼。」と付け足された。
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「で、ここがxになるから必然的にここが出てくるってわけ。」
「あ、そっか。こっちの問題を応用すれば良かったんだね。」
「そう言う事、簡単だろ?」
「うん。ありがとう、すごい分かりやすかった。」
「良かった、何かあったらまた聞いて。」
頭が良い上にかっこいい。
それだけでも十分なのにさらに性格も良いなんて。
佐久間君は本当にすごいと思う。きっともてるんだろうなとつくづく思ってしまう。
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今日の授業が終わり生徒が続々と3階建ての建物から出ていう時にそれは起こった。
「苗字名前さん」
突然後ろから名前を呼ばれ反射的に振り返り、え?と思った。
別に、呼ばれたのがフルネームだからとか声が妙に大人びいてるからとかそういうので、え?と思った訳ではない。
そこに立っている人物が目を疑うような人物だったからだ。
「俺、帝国学園の源田幸次郎っていいます。」
背中をぴんっと伸ばし第一ボタンまで閉められた帝国の制服を身にまとった源田君。
一体なんの用なのか?と不思議に思っていればようやく彼が話を本題へ持ってきた。
「良かったらメールアドレス教えて貰えませんか?」
「めっメールアドレス?」
今の時代中学3年生がメアドのことをメールアドレスなどと省略せずに言うのか?
そんな疑問が頭をよぎったがなにせ相手はあの帝国学園の生徒。
きっと言葉遣いやものの言い方とかにいろいろと厳しく言われながら育ったのだろう。
そう思えば源田君の、姿勢や制服の着こなし方、メアドをメールアドレスなどと言ってしまう所もなんとなく理解できたような気がした。
「無理にとは言いません、でも出来たら。」
「あ、いえ。大丈夫です。」
私がそう言えばさっきまで強ばりながらも真剣な眼差しをした彼の表情が少し緩んだ。
急いで肩がけのバッグの小さなポケットから携帯を出し赤外線モードに画面を変えた。
「あの、私が送りましょうか?」
「あ、じゃあそれで。」
なんだか妙に緊張してしまい携帯を持つ手が少し強まった。
一方源田君の方は特に焦ったり緊張している様子は見られない。
落ち着いている性格なのか、それとも冷静沈着なのか?
そんなことを思っていれば源田君の携帯に自分のメアドが送られた所だった。
ご丁寧にも「ありがとうございます。後で連絡します。」と言われ彼、源田君は他の生徒と同じように靴に履き替えたてものを出て行った。