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□ゆびきりげんまん
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「え?」
聞こえたのは短く、先程の楽しそうな声とは反対の愕然とした雨宮君の声。
「どういう、事?もしかして苗字さんは俺がサッカーをしようとしている事に反対なの?」
「ち、違う!むしろ私は雨宮君がサッカーしている所は見たい。でも、でも…。」
ここが個室で良かったなと思ったのはこの時だった。
雨宮君を見れば眉間に皺を寄せている。いきなり私が変な事を言ったから当然だ。
「でも、身体に悪いんでしょ?心配で、だから試合には出て欲しくないってことで。でも、サッカーはして欲しいの。」
「え、でもそれは。」
「知ってる、私が今言ってる事がむちゃくちゃだって事くらい。でもなんて言ったら良いか分からなくて。」
「そう、か…。」
「迷惑なのも分かってる。でもやっぱり自分の気持ちちゃんと伝えたかったから。」
恥ずかしさと罪悪感の狭間でどうして良いか分からず目をぎゅっと瞑り下を向く。
妙に力が入ってしまい身体が熱を帯びた。
「名前さん、顔上げてよ。」
そう言われ、首を横にぶんぶんと振り抵抗したが『上げて』と更に言われたので仕方が無く顔をゆっくりと上げる。
「大丈夫、迷惑なんかじゃないよ。むしろ、なんか嬉しいな。」
「え?嬉しい?」
「うん、だってさ俺の事心配してくれてるんでしょ?しかも俺のサッカーやってる所も見たいんでしょ?」
「う、うん。」
「だったら嬉しいよ。ただ、試合に出ないでっていうお願いは叶えられないけど。」
「そう、だよね。」
いつの間にか空はオレンジに染まっており窓からはその光が差し込みカーテンが風であおいでいた。
その風に雨宮君のオレンジ色の髪の毛も少しだけ揺れる。
「大丈夫、絶対に倒れないで勝ってみせるから!」
「本当に?」
「本当に、だからさ…はい。」
「ん?小指?」
何を思ったのか雨宮君が小指を出す。その表情は本当にこの人は病人なのかを疑う程良い笑顔だった。
「約束、ほらよくやるでしょ?ゆびきりげんまんって言うの。」
「や、やるけどさ。」
なんだか小学生みたいだなと思ったけどその笑顔にどうしても勝てなく…と言うよりは雨宮君と小指を絡ませる事が恥ずかしく思いったが渋々ベッドに近寄る。
「早く、早く。」
「わ、わかったよ…はい。」
「じゃあいくよ?」
ユビキリゲンマン
ウソついたらハリセンボンのーますゆーびきった
雨宮君の小指からはなんだか温かいぬくもりが伝わってきた。