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「はい、違う。」
「えぇ!?なんでよ!!」
「なんでよって...というか敬語使え、敬語!」
目の前に広げられている数学のワーク。正面には少し面倒くさそうな表情の佐久間先生。
どうやらこれで3回目の問題間違いらしい...。折角の冬休みだと言うのに補習なんて最悪だ。
「だいたい、お前は集中力がないんだよ、もっと集中しろ。」
「そんな事言ったって...。」
よく『好きな人と一緒にいると集中出来ない』と耳にするが、またくその通りだ。現に、今まさにその状況なのだから。
「はぁ、少し休憩するか?」
「うん。」
「なんか今日元気ないな。」
「そう?」
そりゃ丸1日数学三昧だったらテンションは落ちるに決まってる。
そんな気も知らずに佐久間先生はこんな大量に問題を用意して...。
私が数学嫌いなの知ってるくせに。
そんな事を思っていれば何時の間にか正面にいた佐久間先生が椅子ごと移動して隣にきていた。
「やっぱ元気ないだろ。」
「まぁ...数学三昧だし、ってそれより先生、」
「ん?」
「いいの?補習って結構日数あるけど。」
「何が?」
「だから、その...彼女、とか?」
そんな事を聞きながらちらっと佐久間先生の顔を見る。しかし、肝心の先生の反応はイマイチだ。首を少し傾げただけだった。
「だから、デートとか?クリスマスとか?」
「あー、そう言う事か。残念、俺彼女いない。」
「うっそだぁ。」
「悪かったな、期待外れで。」
少しオーバーにリアクションすればむすっとした表情の先生。それでも先生に彼女がいないと分かって安心した。
「じゃあ、今年のクリスマスは1人ですか?それとも鬼道先生と?」
「よせよ、男2人でクリスマスは気持ち悪いだろ。」
「ははっ、確かに。」
「笑うな。」
そう言われたのと同時にコツン、とおでこを先生の人差し指に突っつかれた。
それだけで体温が一気に上昇してしまう。
「そう言うお前は?」
「え、私ですか?」
おでこを片方の手で抑えていれば、先程の質問が今度は私に向けられた。
クリスマス...本当は彼氏なんかがいれば楽しいのだけれど。
「私も彼氏いないんでシングルクリスマスです。」
「そう、か...。」
「お互いジングルベルじゃなくてシングルベルですね。」
「ばか。」
私がへにゃりと笑を浮かべれば佐久間先生は、しょうがないな、と言う様な微笑みを見せた。
そして、
「続きやるか。」
ぽんっと、佐久間先生の大きな手が私の頭にのった。
「あ...はっ、はい。」
やっぱり、こういうさりげない事で心拍数が上がってしまう。
教師に恋なんて許されない事なのに...。