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「佐久間先生、おはよ。」
「おはよ、じゃなくておはようございます、だろ?」
「いいじゃん、いいじゃん。」
補習二日目。昨日出された宿題を先生に渡しながら挨拶を交わす。
相変わらずかっこいいな、と思った事は気にしないで欲しい。
「あれ?先生、隈出来てるよ?」
「あぁ、補習の生徒が今年は沢山いるからな。睡眠時間が削られるんだよ。」
「え?私以外にもいるの?」
あくびをする口を片手で押さえてる先生の顔を見る。思ってみれば、確かにやつれた感があるような気がしなくもない。
「まぁな。」
「1対1で?」
「あぁ。」
「そっか...。」
じゃあ昨日のみたいな頭に手を乗せたりとかは、何も私だけじゃないんだ。
きっと他の子にも...。そう思うと胸が苦しくなり思わず佐久間先生から顔を背けてしまった。
「どうした?」
「ううん。」
否定すればそっか、と言うようにあまり気にしない様子の先生。
少し位気にしてくれてもいいじゃない。と、どうしても思ってしまう。
そんな事はお構いなしに雰囲気はどんどん勉強へ向かっている。どうやら今日は数学ではなく理科らしい。
「えーと、名前はどこが解らない?」
「えっ、佐久間先生?」
「ん?」
教科書をペラペラと捲りながら小さく返事をされる。
長い足を組みながら椅子に座るその姿はかっこいい、と言うより美しいと言った方がいいかもしれない。
「今、名前って...。」
「あぁ、名前?それが?」
「だ、だって今まで、お前って呼んでたのに。」
「まぁ...気分だよ気分。なに?名前呼び嫌?」
少し意地悪そうな笑みを浮かべられた。ここの人は確実に確信犯だと思う。私が嫌って思ってないのをわかりきっているのに。
「別に、嫌ってわけじゃ...。」
「ていうか、嬉しいだろ。」
「なっ!?」
思わず座っていた椅子からガタっと音を立てて立ってしまった。
思いっきり慌ててれば『照れんな。』などとさらに被せられてしまった。
「ほら、いつまで立ってんだ。今日は科学分野のとこだろ?」
佐久間先生のそう言われまだ火照っている頬を気にしながらも椅子に座り直した。
今日も真正面にいる佐久間先生。机一つ挟むとなんだか遠く感じた。