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「悪い、苗字。」


最悪だ。今日の運勢は絶好調、特に恋愛運は上昇です。なんて朝言ったアナウンサーは。あれ、今日だっけか?昨日のような...まあ、そんな事は今考える事じゃない。


「はあ、」


「なんか、やばい所見ちゃった系?俺。」


「南沢先輩になんて最悪です。もう世界が滅びれば良いと思います。」


「それはやめろ。俺が全力で止める。」


人生初のマジ告白。勇気を出して期待に胸を膨らませて一杯妄想して挑んだのだが何がいけなかったのか、悪かったのかは分からないけれど、まさかの当たって砕けろになってしまった。自信があっただけに正直悔しい。しかも私が振られる場面をまさかのこの男、南沢篤志に見られていたもんだからたまったもんじゃあない。


「ていうか、なんで先輩がここにいるんですか。」


「屋上に昨日弁当箱忘れたから取り行こうとしたら、あれ?みたいなさ。」


「お弁当箱なんてなんで忘れちゃうんですか!」


「知らねえよ、それより屋上の前の階段で告白なんかすんな。せめて放課後の教室とかにしろ。」


南沢先輩はそう言うと階段の段差に腰を下ろした。それに続くようその隣に私も同じように腰を下ろせば南沢先輩と目が合った。こっち見るなと言ってやりたいのだが相手は一応、先輩なのでそんな事したら何されるか分かったもんじゃない。命が縮まるのは間違いないだろう。


「お前さ、あいつのどこが言い訳?背、小せえじゃん。」


「先輩は分かってないですね、あの小ささが可愛いんです。あ、あとあの奇麗な水色の髪の毛も。」


「俺は毎日見てるから分かんねえな、というか見飽きた。」


「先輩、」


「なんだよ。」


「それ、自慢ですか?」


「んな訳ねえだろ。」


悔しい、なんで南沢先輩は倉間君と毎日毎日会って話す事が可能なのに私にはそれが不可能なんだ。クラスは一緒じゃないわ、メアドを知ってても勇気が出なくてメールは送れないわ。私はどんだけちっちゃい女なんだ。


「私、先輩になりたいです。」


「へぇ、じゃあそしたら代わりに受験勉強しっかりやれよ。」


「あ、やっぱいいです。」


「なんなんだよまったく。あ、そろそろ俺屋上行くわ。」


失恋という壁にぶち当たり気持ちがブルーな私にさらっとそう言う南沢先輩。こういう時は少し位慰めてやるもんが先輩なのだろうけど南沢先輩にはどうやらその意識がないらしい。もうブルーを通り越してブラックになったかも知れないというのに。


「じゃあな、あ、ちゃんと次の授業には出ろよ。出ねえと内申下がるぜ?」


「分かってますよ、それじゃ。」


手をひらひらと2回振った先輩は屋上に、私はその先輩と反対方向の自分の教室に戻った。ああ、本当になんて最悪なのだろう...。


屋上へ続く階段


それにしても...なんでよりによって南沢先輩なんだ。
 

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