さよならを云えなくて善かった、
□だけどたぶん間違いなく、
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だってさ、わざわざあなたが知らなくたってこんなこと、わたしは説明なんてしたくもないけれど、今云わなかったら私は密かに探し続けてでも、向きあったり痛んだりしないで忘れて居られたのにさ、
何度か色んな扉が開いたり閉まったりする音がして、やがて不動さんの声がした。
鬼道くんを呼ぶ音を、わたしは密かに自分の部屋のドアの前で待ち焦がれて聴いていた。
律義なノックの音がする。
あああ、確かにただの子どもの頃だったらこんなことが間違いなく日常だった。
だけれどなんでだろう、お互いに気付いていると知ってから、こんなにも気になって恋しいのは。
(紛れもなく、僻んでいたのに)
(忘れられないよ、世界で一番間違いない形であなたが、)
(わたしは、)
だけどたぶん間違いなく、