カルピスみたいにまっしろな、

□そういうときがきた?
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俺はその日、待ち合わせにあろうことか35分も前に到着し、はしゃぎっぷりをよりによって面倒くさいチームメイト数人に露呈したのだった。





松風(の家の姉さん)が予約を入れた、女子に(も)人気だと云われるとあるカフェでの食べ放題とやらで、宴会じみて打ち明け話を始めようと松風が云い出したのは、丁度午後2時を過ぎた所だったと思う。


騒がしい入口が開くと、ひと組のカップルがべたべたと寄り添って入店してきた。

食べ放題といえど甘ったるいクリームがけのパフェなんてそういくつも食べられる訳もなく、俺は2つめのコーヒーゼリーを、惰性でいじくりまわしていた。


「わあ、カップルだ!」


そうはじめに声をかけたのは松風で、他のメンツも興味津津に見入っている。

しばらくして二人が席に着き、それを視ておもむろに狩屋があの意地の悪そうな笑みで話しだした。


「ぶっちゃけさあ、」


狩屋が手もとのチョコレートパフェのソースをくるくると弄る。


「みんなって、彼女とか、好きな人とかいんの?」


ちらりと松風を視遣ると真っ赤な顔で眼を泳がせていた。
西園も同様で、影山だけは、きょとんと微笑んで奴を視返していた。

ポーカーフェイスをあくまでも貫き、興味がないと云う顔を通す俺に、悪魔の声が投げられた。



「俺、剣城くんの恋バナ、聴いてみたいなあ」


「…は、」




「お、俺も俺も!!」
「剣城、僕も気になる!!」
「僕も!!聴きたい!!」



助かったとばかりに便乗してくる好奇心を恨めしく思いながらも、俺は冷静を通すことに決めた。

右手の中のプラスチックのフォークが、ぱきっと悲鳴を上げた。


「で、居るんだよね、彼女、」

「居ない」

「嘘だ、絶対にいるでしょ、なんか進んでそうだし」

「居ないって云ってるだろ、しつこい」

「好きな子は?」


ずいずい前に近付いてくるので格好としては俺が引く形になった。



(すき、な、こ)


薄ぼんやりと影が浮かんだが、俺は自分のことながらその真相を知らない。



「…居ない」


「「「えええええええ!!?」」」



声をそろえて驚くのが不思議で、俺は真っ直ぐ右に顔を向けた。

ちょうど、例のカップルが、嘗めまわし合う様に口づけ合っている所に遭遇した。


「!!!!!?」


ばっと正面を向き直すと、松風が俺の肩に手を置き、ぐいぐいと詰め寄った。



「ねえ、りんごは!?りんごは違うの!?好きじゃないの!!?」

「…金原はそんなんじゃない」


「葵は間違いないって云ってたのにねー」


「えー、じゃあなんでいつも一緒に部活に来るの?」


「それは、…クラスが一緒だから?別に普通だろ」


「でも、僕たちと葵は別々だよ?ねえ、天馬?」


「そんなの知らねえし」


溜息を突いた正面の狩屋が腕組みをしてふんぞり返り、俺に云った。



「じゃあ訊くけどさ、剣城くんの中で、…例えば葵ちゃんとりんごちゃんの二人を比べたら、好きの種類はおんなじじゃないんでしょ?」


4人揃えて俺を射抜くように見詰める。
穴が開きそうだ。






幾度となく思い知らされた答えを逃げ場のない方向へ突きつけられて、俺は絶句した。



(そんな風には思っていない、思っていない、)
(けれどそんな関係になると、いちばん想像できるのは?)
(そんなはずがない、俺にはまだはやい、)


そういうときがきた?

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