偽りの世界。

□壱拾弐
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 朝の涼しい風が姿を消し、暑く湿った空気が首の周りに纏わり付くようになった。日もだいぶ高くなり、頭を照りつける太陽が嫌になる。


 「まだ、つかない……」


 朝の日が昇り始めた直後くらいに登り始めたのにまだ見えない崖の一番上。しびれてきた腕とまだ遠い道のりに気が狂いそうになった。自分の筋力のなさを呪い、突起を見つけては指をかけ、くぼみを見つけては休み、を繰り返しどうにかこうにか進んでいるけれど。そろそろついてもいい頃だと思う、正直。


 「だーっ!もう、暑い!!」


 なんで今は夏なのだろう。
 なんで夏は暑いのだろう。
 なんで太陽が存在するのだろう。

 辛さで頭がおかしくなりすぎて意味の分からない事を考えている気がする。なんで自分はこうも現実逃避が苦手なのかとまた現実逃避をしている事に気がついて現実へと目を向ける。私が今いる現実はでかい崖が目の前にあって。それを登ろうとしている、という状況。ロッククライミングができるじゃん、こんなでかい崖でできるなんてそんなにある事じゃないよ!とポジティブに考えられる時間も過ぎた。
 なんとか疲れている体に鞭を打って登っていく。コーチたちの言う事をすべて信用する訳じゃないけれど、強くなるためには、彼らを信じていくしか道はないから。だから私は登っていく。それしかないのだろうから。


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 「あとちょっと!」


 ゴールが見えてきた。終わりに近づく事でこんなにテンションがあがるのはテスト期間とこの崖登りくらいだと思う。これだけでも相当筋力が上がった気が……。

 それが思い込みでないと願いたい。こんなに頑張って登ったのに全く意味がありませんでした、なんて冗談にすらならない。絶対笑えない。


 「さ、最後だな」


 この崖を登り始めて多くなった独り言もあと一回で終わりだろう。もうこんな可哀相な子みたいにならなくていいからそれもありがたい。

 あと少しをさっさと登ってしまおうと指に力を入れて体を引き上げる。登りすぎたせいでコツをつかんできた私はロッククライミングで世界に挑戦できるのではないかと思い始めた。


 残り1メートルもない。ラスト一回。


 ようやく登れたのだと感じて高揚する心の勢いで私は最後の一回を終わらせた。


 「終わったー!!」


 最後の独り言。
 私はただただ達成感で満たされていた。



 「地獄へようこそ、小娘。」



 これから始まる地獄も知らないで。

 強くなるための。〜フィソステギア〜


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短い!
すいません!久しぶりの更新がこれとかあり得ない!ほんとすいません!!

フィソステギア。花言葉は「達成」です。崖登りが終わりました。まだまだこれからが地獄の始まりですがねww


50000hit、本当にありがとうございます!
企画をやらせていただいているので、よろしくお願いします^^

お読みいただきありがとうございました!

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