短編
□約束と夢
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「侑士、夢ってある?」
帰り道、俺の隣を歩いていた名前がそう聞いてきた。
少し、クエスチョンマークを浮かべていると、
進路調査――
そう、名前が呟いた。どうやら、進路に迷っているらしい。
「俺はこのまま高校へ行くんやけど、名前は違うんか?」
「分かんない」
「分からない?何が、分からないん?」
「将来のことも、進路のことも、自分が何をしたいのか。全然分からない」
“どうすればいいかなぁ”
と、呟く名前。相当悩んでいるらしく、ほとんど喋らない。
そして、名前が蹴り続けていた小石が消えた。蹴るのに失敗して、土手を転がっていってしまったのだ。
「消えちゃうのかな、私もあの小石のようにパッと…」
「どうなんやろな」
「だって私が消えても世界は変わらない。そう考えると、将来とかどうでもよくなっちゃうんだ」
「そんな悲しいこと言わんといてな、名前。俺は考えたい。自分のいる将来を。名前がいないと、俺の世界はぐしゃぐしゃや」
俺がそう言ったら今度は名前がクエスチョンマークを浮かべた。
よく意味が分かっていないらしい。
「俺は、名前がいないといやや」
「そんなの私も一緒だよ。侑士がいなくちゃつまらないもの」
いたずらっ子のように笑う名前にデコピンをくらわせ一言。
「じゃぁ、ずっと一緒やな」
将来の夢、ひとつ決まった。
約束と夢
君と一緒に進むこと―――