頂き物&捧げ物
□貴方を追いかけます
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うちの学校には「完璧」の名を欲しいままにしている人物がいる。
生徒会長、テニス部部長という大役2つをこなし、自分自身も相当有名なテニスプレーヤーであり、勉学でも申し分なし。表情の変化がないことが少しウィークポイントな人。
うちの学校で名を知らないものはいない。
その人物の名は、手塚国光。……先輩。
勿論私も知ってる。むしろ普通の生徒より先輩を知ってる。それは私が生徒会の副会長だから。
私は会長のサポートをするのが役目なのだが、完全無欠と呼ばれる会長をサポートするというのは想像以上に大変だったりする。会長が全部やってしまうから。
今日だってそうだ。
部活がある筈なのに、他のメンバーの分の仕事までやってしまっている。
「……会長は部活があるんですから、行ってください。私は部活、休みなので」
「いや、仕事を疎かにしてはいけない」
うん、知ってる
と思わず言いたくなってしまう。
会長が言うことは基本的に正しい。パーフェクトに正論だ。
だからといって私が受け入れられるか、と言ったらそうでもない。
確かに、仕事は疎かにしてはいけない。
手抜きなどしてはいけない。
中途半端にしてはいけない。
でもそれは自分の受け持った仕事を、という話だ。
自分の仕事が終わったにもかかわらず、他人の仕事も請負って”疎かにしてはいけない”と言う会長はすごいと思う。でも、それじゃダメなんだ。
会長が仕事をやってしまうということは、他のメンバーを信用していない、と思われてしまう行為だ。
会長がいくら仕事が速くても割り当てられた他人の仕事に手を出すのはやはりおかしいと私は思う。
だって会長が全部やってしまうなら生徒会役員はいらなくなってしまうのだから。
そして、会長自身の体に大きな負担をかけることになる。
精神的にも肉体的にも。
私は特に優等生って訳ではないけど普通に真面目な方だと思う。私は時々学校でも友達の前では息抜きをして普通にそういう真面目な態度を緩ませたりする。そうやってONとOFFを使い分けているから疲れることはそうない。けれど、会長は完全な優等生だ。いつも優等生だ。仲間の前でも。それが演技なのか素なのかは置いておいて、そんな風にいつも気を張っていたら大変だろう。それに「長」という肩書きにプレッシャーを感じ過ぎているような気もする。
そして、働き過ぎ。
もっと他の人に頼る、とかした方が良いと思う。
「取り敢えず、部活行ってください!」
「いや、だが……」
「これは、私の仕事です!会長はやりすぎなんですよ。全国大会も近いですよね?」
無理矢理、納得していない会長から書類を全て奪い、部活にいくよう急き立てる。
私はもっと、会長を支えたい。
会長にもっと好きなことをしてもらいたい。
だから、副会長がいるわけだし。
すまない、と言いながら生徒会室を出て行った会長を見送った私は、会長から奪った書類に向き直った。