短編

□ぐすぐす
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「わたし、まいごじゃないです」


そう言った幼い女の子は皺になる程、自分の服を掴み下を向いたままでした。「迷子ではない」と言われても、彼女はこのギアステーションのベンチにもう2日もいますし、ご両親から捜索願いを出されてもいません。わたくしの後ろで興味津々に彼女を見ていたクダリが、にこにこと笑いながら彼女にチョコレートの箱を差し出しました。


「ねぇ、キミ。お腹すいたでしょ?」
「クダリ、職務中に何て物を」
「ノボリ、ちょっと黙ってて」


空いてる手で口を覆われ、不本意ですがクダリのしたい様にさせる事にしました。箱から銀紙に包まれたチョコレートを出したクダリは、手慣れた様子でそれを一口大に割ると彼女の手に握らせ、どうぞ、と彼女から一歩下がりました。彼女は握らされたチョコレートを見て、ごくり、と唾を飲みましたが数秒の葛藤の末、それを床に投げつけてしまいました。


「い、いらないです。お腹なんかすいてません」
「なんで?2日間も飲み食いしないで、お腹空かないわけないじゃん」
「おかあさんが、むかえにきます。そしたら」
「失礼ながら、お嬢様」


そう口を挟むと彼女は弾かれた様に顔を上げ、わたくしを見つめました。


「憶測でございますが、貴方様のご両親は貴方様を迎えには来られません」
「…っ」
「見たところ、貴方様のお召し物は薄汚れておりますし、栄養状態もよろしくない様子」
「……」
「それに、わたくしの言おうとしている事を貴方様はよくわかってらっしゃいますね?」
「だ、だって…ままは、ちゃんとむかえにくるよ、って」
「…そんな女、忘れてしまいなさい」


わたくしの言葉に黙りこんだ彼女を抱き上げて、あやす様にその小さな背中を擦ると声を上げて泣き出しました。縋る様に力一杯わたくしのコートを掴んで、彼女は泣きじゃくりました。クダリが小声で、その子の親、探すの?と聞いてきましたが静かに首を横に振ると、彼は嗚咽を漏らす彼女の頭を優しく撫でました。


ぐすぐす、だぁれ?


(ぼくら完全にロリコンだよね!)(否定はしません)

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