BLAZE CREST
□‡プロローグ‡
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生暖かい風が吹きすさぶ夏の夜。
ある国の小さな村は、悲しみに包まれてしんと静まり返っていた。家々の灯は消され、その戸の向こうには人の気配はない。まるである一点で、時を止められたように音もなかった。
そのかわり、まるで皮肉のように、空には満天の星空が輝いていた。現実味のないほどの美しさだった。
「……シェルア……ルヴァン……」
一枚の紙を持つ手をカタカタと震わせ、女性は鳴咽を繰り返して泣き崩れていた。横に立つ男性は歯を食いしばり、感情を出すまいと握った拳を震わせている。
小さな村に届いた一枚の訃報。村人たちは皆小さな広場に集まり、愕然とした面持ちで二人の周りに集まっていた。
誰もが信じられなかったのだ。村一番の元気者が、あわやこんな事件に巻き込まれてしまうなんて……
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