ローズ×ソード†
□2.蝶々花
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拓人は今、自分の事をゴミと言った。
そう、ゴミ。
これが蒼空の暮らす国の現状だ。
まず、王族、豪族、貴族、平民、奴隷…そしてゴミと言った風に人の格付けがある。
ゴミはどう足掻いたってゴミだ…。
それに、ゴミは平民や奴隷が暮らす下町にすら入れない。貴族が暮らす高街なんて尚更だ。
では…ゴミは何処に住んでいるかと言うと、簡単に言ってしまえば“ゴミ山”だ。
蒼空の住む国は海に面している一角以外は、全て山に囲まれている。
この国の者達のゴミは全て、ゴミ山こと朝霧山に棄てられる。
街に近づく事すらできない彼等は、棄てられたゴミをあさって生活するしかない。
しかし、海を渡って此処を抜け出したいと言う者は少なくはない。
海を渡るには船がいる。
そして、船を手に入れるには金がいる。
だから彼等は何をするか――?
一つは、商売だ。
山はゴミ山の他にも沢山ある。しかし、どれも獰猛な生き物たちが住んでおり、ジャングルのような有り様だ。
そこに住む生き物を何とか倒し、その皮を貴族達に売ると言う事だ。
山に近づこうにも近づく力量がない貴族達にとっては、その皮は高級品なので、高く売れる。
しかし、獰猛な生き物たちを相手にする訳で、命を落とす危険性も高い。
もう一つは、盗みだ。
国を囲っている壁をよじ登り、店の金品を奪って逃げる。
なんとも単純な作業だ。
「ねぇ、今日も行くの?」
蒼空は楽しそうに、拓人に向けて言った。
「あぁ。今日…はアルテナの金物に盗りに行ってから、カンバル山に行くつもりだぜ?」
拓人はニヤリと笑みを浮かべた。
「あ…!バルセロナのお頭の所にいくのね!?だったら私も行くわ!…だって、家に居てもつまらないし!ね?」
「ま、蒼空の自由だしよ?俺は別に構わないよ〜!!」
そう言うや否や、拓人は愛用の鉄パイプを手に取った。
それを見て、蒼空も自分の体格に合う長さの、鉄パイプを手に取った。