トミーロッド

□桜が似合わない君
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「トミーロッドっ!」

「……なんだよ、うるさいな」

「見て見てっ」


ウザそうに私を見るトミーに両手いっぱいに持った桜の花びらを見せる。


「きれいでしょっ?」

「別に、部屋汚れるから早く捨ててきてよ」

「汚れないしっ!トミーは冷たいなぁ…」


そう言ったと同時にものすごい勢いで吹く風。
確か今日は春一番だってニュースで言ってたかも。
ほのぼのしながら両手に持っていた桜の花びらを見ると……ない。
持っていた花びらたちは、さっきの風で吹き飛ばされたらしく部屋のあちこちへと散らばっていた。


「………」


無言で床に散らばった花びらを見ているトミー。
口からは蟲の脚が半分でちゃっている。


「ス、ストップ!すぐ片づけるから待って!」


急いでトミーの口を手で押さえる。
今、蟲を出されたら確実に私の命はないだろう。

急いでほうきと塵取りを持ってきて掃除をする。
さっきまで綺麗だった花びらたちは塵取りの中へと入ることでゴミとなってしまった。


「あーあ、綺麗だったのに……」

「ボクはそんな薄汚れた花は嫌いだけどネ」

「…そうなんだ、……」


薄汚れた花かぁ……。
私もそう思ってたな。今まで。


「私は好きだよ、トミーの髪みたいで」

「あ?一緒にしないでくれないかな」

「綺麗だってことだよ」


トミーといると今までの薄汚れた世界ですら綺麗に見えたんだもん。


「ま、いいけどね」


ニッコリ笑うと、興味なさげにマニキュアを塗りなおすトミー。
満更嫌でもないらしい。

ただ……


「トミーに桜って似合わないんだよね」

「は?」

「桜の花言葉って"純潔"なんだよ」


今考えたらなんであんなこと言っちゃったんだろうと思う。


「へぇ、それはボクとは正反対の言葉だね。」


今日初めてトミーが笑ったかと思うと蟲を3体吐き出した。


「せいぜい頑張りなよ」


そう言って彼がニッコリ笑うのと蟲が私に襲いかかってくるのはほぼ同時だった。





桜が似合わない君
(早くしないと食べられちゃうよ?)
(きゃーーー)



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