2周年おめでとう!


□ざーとの後に
1ページ/1ページ







 「…もう知りません」

 「………」


 はぁ…とわざとカナムさんに聞こえ
 るように吐いたため息も静かな部屋
 にただ悲しく響くだけだった。

 カナムさんとこのやり取りをやり始
 めたのはいつからだったろうか。喧
 嘩をするのは珍しくはないが今とな
 ってはなにが原因で喧嘩をしたのか
 すら覚えていない。それほどどうで
 もいいことで喧嘩をしたということ
 だろうか。


 「いつまで黙ってそこで突っ立って
 いるつもりなんですか」

 「………」


 やはり、カナムさんは下を向いたま
 ま口を開こうとはしない。


 「もう言うことはないんですか?」

 「………」

 「ないなら、出ていってください」


 捜査の邪魔になります、そう言った
 と同時に私はひどく後悔をする。

 私はカナムさんと仲直りをしたいと
 思っているのに。カナムさんの笑っ
 た顔を早く見たいと思っているのに。
 口から出てくる言葉は気持ちに反し
 ているものばかりで、ただ小さいプ
 ライドを守るものばかりで。

 もし、ここでカナムさんが部屋から
 出て行った時のことを考えると言わ
 なければ良かったと思うけど小さな
 プライドのせいで取り消すことなん
 て私にはできなくて。


 「…出ていきたくない」

 「なら、どうするんですか?」

 「えるっ……ごめっ…」


 泣き出したカナムさんに「大丈夫で
 すか?」とワタリがハンカチを渡す。
 そして、私の方へ振り返ると「そろ
 そろ素直になってはいかがですか」
 と言ってきた。
 
 そんなことを言ってくるあたり私の
 気持ちや小さなプライドなんてこの
 人にはお見通しなわけであって。こ
 の小さなプライドのせいでカナムさ
 んに謝ることもできない私にその言
 葉がきっとワタリが出してくれた最
 後の助け舟なんだと思う。

 …やはり、ワタリにはかないません。




 でざーとの後に
 (仲直りしましょう)



 


[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ