Clap log

□星に願いを
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 「七夕も終わっちゃったんだね」


 梅雨が明けてやっとジメジメから解
 放されたある日の夜、久々に空には
 星が浮かびキラキラと輝いていた。


 「へぇ、お前七夕知ってたんだ」


 トミーは暑そうに汗ばんだピンク色
 の髪をかきあげた。


 「まぁね、願い事だってある」


 この世に生まれて何も望んだことが
 なかった私にできた唯一の願い事。

 
 「へぇ、意外」

 「…どんな願い事なのか聞かないの?」


 別に、聞いてほしいってわけじゃな
 いんだけどね。ほら、会話が続かな
 くなっちゃうじゃん。

 ちらりと、トミーを見ると暑さにイ
 ライラしているのかお世辞にも機嫌
 がいいとは言えない顔をしていた。


 「……、私ねトミーに殺されたいかも」

 「それが願い?」

 「うん、そう」

 「へぇ」


 驚くかと思ったけど意外と冷静だっ
 たトミーさん。流石、副料理長なだ
 けはあるということなのだろうか。
 それとも、ただ単にイライラし過ぎ
 て会話するのも面倒になっているの
 だろうか。


 「殺されたいって言っても今すぐに
 じゃないよ?いずれはってこと」

 「うん、今すぐ殺すつもりはない」

 「ふーん、それはよかった」


 私のその一言で沈黙2人とも沈黙に
 包まれた。ふと、空を見上げると少
 しだけ月が移動していた。
 

 「トミーって願い事ある?」

 「さっきできた」

 「どんなの?」

 「お前を殺すこと」

 「それは、ありがたい」



 星に願いを
 (貴方以外に終わらされる一生なんて)
 (君がボク以外の誰かにに殺られるなんて)
 (あってはならない話だから)
 
 

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