トミーロッド
□歪んだ愛情
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「おい、名前」
「はい、何でしょうかトミー様」
「……その顔、どうにかなんないの?」
「………」
目の前には所々に血がついているトミー様。
血が付いているといってもトミー様の血ではなく返り血だろう。
床には、もはや原型をとどめてはいない人であったであろうモノ。
トミー様が言っている"その顔"というのは、目の前でこんなことが起きていても無表情な顔をしている私のこと。
「……すぐに片づけをいたします」
とりあえず、床の血を拭くために雑巾を持ってこようと歩き出す。
「待てよ」
「はい」
――――が、止められた。
振り返るとさっきまで死体を蹴っていたトミー様が目の前にいた。
「死にたい?」
「……いえ、」
「そう言われたら、殺したくなっちゃうじゃん」
「………それもいいのかもしれません」
「は?」
私はトミー様の部下。
トミー様に殺されるなら本望だ。
「名前って、つまんないね」
大概の人間は殺すって言ったら恐怖で顔が歪むんだけどな。
トミー様はそう言うと、ため息を吐いた。
「…すいません」
「まぁ、いいよ」
今度はその顔を恐怖で歪ませてやるよ、低い声で呟くと私に背を向けた。
これはもう私に行ってもいいという合図なのだろう。
「失礼します」
トミー様にお辞儀をして部屋を出る。
"今度はその顔を恐怖で歪ませてやるよ"か……。
決して嬉しくはない言葉に何故か胸が高鳴った。
歪んだ愛情