トミーロッド

□その笑顔は本物か?
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「トミー!お帰りなさいっ」

「……ただいま」


部屋の扉を開けると同時にボクに抱き着いてくる名前。


「どいてくれない?ウザいんだけど」

「はーい」


ボクにウザいと言われてこの態度をとっていられるのも名前だけだろう。
ウザいって言ってもまんざらでもないんだけどネ。


「今日はどんな食材狩ってきたの?」

「今日はハントじゃないよ」

「じゃあ、会議?」

「そう」


もちろん、出てないけど。



「ふーん」


なんだよ。
せっかくボクが答えてやってるのに。

名前は黙ったままニコニコしながらボクを見上げている。
だいたい、言いたいことはわかってる。


「トミー!」

「あ?」

「お腹すいたっ」


やっぱりね、こんなことだろうと思ったよ。


「自分で作りな、ボクは仕事で疲れてるんだ」

「……どうせ、会議には出席してないくせに」

「……なんか言った?」

「い、言ってない!」


首をよこにぶんぶんと振ったかと思うと走り去っていった名前。
何分か経つとトン……トン…という包丁で何かを切っているような音が聞こえ始めた。


聞いてられないな……


名前のところへ行き、包丁を無理矢理奪い取る。


「と、トミー!」

「指、怪我してる」

「こんなの全然大丈夫だよっ」


名前はボクに大丈夫なことをアピールするようにニコニコと笑う。

ボクはこの笑顔を見るたびに……


「……今日はボクが作るから座ってな」


そう言ってしまうんだ。




その笑顔は本物か?
(料理ができる男の人ってかっこいいよね!)
(はあ……)



fin 2012/05/02

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