トミーロッド

□それでも食べきったボクは
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「完成っ!」

「…それって、完成なの?」

「もちろんだよ、トミーさん」


何故か名前は自慢げだった。
腹が立ったから蟲を出してやろうかと思うくらい。


ある日、突然名前が夕飯を作ると言い出した。
まったく、ありがた迷惑な話だ。
1度は断ったが、名前がどうしても作りたいと言う。
実際、名前が作った料理は食べたことがなかったボクはもしかしたら…という期待をしてみた。


……やはり、それが間違いだったか。


目の前に出てきたのは白い米の上に黒い液体がかかっている料理。
黒いものの中にはゴツゴツとした何かが入ってある。
白い米と黒い液体、体対照的なそれは一層気分を悪くさせた。


「一応聞いておいてあげるよ、コレなに?」

「えっ、トミーってカレー知らないの?」


本気で殺してやろうかと思った。
喉から半分出ている蟲がギギッ…と鳴く。
それに気づいていない名前はニコニコとボクが食べるのを待っている。


「そういえば、ボギーの大好物はカレーなんだってさ」

「えっ、そうなの?」


知らねぇよ。
でも、上司の彼女が作ったものを食べないってことはないだろう。
ボクの身に何か起きた時のためにアイツにも食べさせとかないと…


「じゃあ持って行ってあげようっと!」


名前は嬉しそうに黒い液体を器に入れてラップをする。
そして、行ってきますといって出て行った。


名前が帰ってくる前に目の前のコレを何とかしなければ。
名前が帰ってくるのはだいたい10分前後だろう。
その前に蟲に食わせるか…。

適当に蟲を吐き出す。
なんだか、この料理のために蟲を吐き出すカロリーがもったいなく思えてくる。


「じゃ、あとはよろしくネ」


その場を立ち去ろうとした時、蟲が「ギギッ」と鳴いた。
その瞬間。


「あれ、…なにしてんだろ」


手には、たった今吐き出したばっかりの蟲の死骸。
急所にあたったのか蟲はピクリとも動かない。

顔を上げると名前が作った料理があった。


「……、不味い」


一口食べてみると口いっぱいに広がる苦さ。
想像以上に不味い。



それでも食べきったボク



一体、何なのか。




fin 2012/05/30

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