トミーロッド

□あなたの傍にいることが
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 『トミーってさ、』

 「…なに?」

 『やっぱいい』


 これから先は言ったら殺される可能
 性があると判断したから言うのをや
 めた。
 まだ若いのに殺されちゃたまんない。

 テレビへと視線を向ける。すぐ近く
 で舌打ちが聞こえたと思うとテレビ
 画面に映っていたイケメンでもブサ
 イクなわけでもない中途半端な俳優
 の顔がバチッと音を立てて消えた。


 「言えよ」

 『……ん、』


 どうしようか。
 明後日、グリンパーチに仕事おしつ
 けられてるんだよな。
 んで、来週はハントに行かないとい
 けないし。
 再来週は…なんだっけ。
 とりあえず、私はまだ死ぬわけには
 いかないんだよね。

 トミーの表情をうかがうように目を
 合わせる。

 あ、やっぱり今言っとかないと殺さ
 れるわ。

 ふぅ、ため息を1つ吐いて口を開く。


 『…吐き出した蟲ってどうしてるの
 かなって思っただけ』


 まさか、また体の中に戻すとか?
 この言葉だけは言わないでおいた。


 「あ?殺すに決まってんじゃん」

 『やっぱりそうか―』


 もう一度体の中に戻すっていくら口
 から蟲出すトミーでもグロすぎるよね。


 『私ね、……結構好きよ』

 「なにが」

 『トミーが、蟲を殺してる姿』

 「へぇ」


 自分でもおかしいと思うけど、使
 えないやつは全部殺していくという
 考えが意外と好きだったりする。



 だって



 「ボク、今日ハントなんだよネ」

 『あ、私も行きたい』



 蟲が殺されてく音を聴いてると



 『なにを狩るの?』

 「忘れた」



 あなたにとっての私はゴミじゃない
 って安心できるから。




 あなたの傍にいることが
 (私が存在してる理由だと思うから)
 2012/12/01
 

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