木ノ風
□異質
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千「…どうしよう……」
物陰で息を潜め、私は頭の中で何度も繰り返した言葉を紡ぐ。
父を探して京に来たのに、初日からこんな目に会うなんて。
「……ひひひひひひ…」
物陰に隠れてすぐに聞こえた男達の悲鳴。
千「……どうしよう」
好奇心に駆られて、見なきゃ良かった。
震える身体を抱えるようにして覗き込んだ世界へ再び目を向ける。
白い髪紅い目
白い雪紅い血
白い息紅い屍
その中に 浮かぶ 浅葱色
千「…逃げなきゃ」
ようやく動き出した思考が、今度はけたたましく警鐘を鳴らす。
逃げなきゃ、
逃げなきゃ、
殺される。
……カタンッ
千「…っ!」
逃げようと動かした足が何かにぶつかり、響く音を立てた。
千(…気付…かれた!)
その音に反応し、白髪の影がユラリと振り返る。
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