▼銀魂二次創作

□手を繋ぎたい
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歩く歩幅はほぼ同じで、けどスピードが違う俺達はおかしな距離をあけて歩いていた。
それは俺たちの心と同じで、微妙な距離。
恋人とは言えない、そんな仲ではあるがそこら辺の友達ごっことも違う。
互いに愛を確かめ合ったことも、愛を伝えたことも無い。
そう、恋人ではないのだ。
しかし、体は何度も重ねていた。ただ、そんな関係。
この関係が長く続くとは、思えない。
まあ、だからこそなのだろう。後腐れ無しに、飽きたらやめれば良い。
その方がかえって楽かもしれない。快感だけを求めて、交わる。
愛なんて確かめるものではない…。

だが、そう思ってるのはあいつだけだろう。


最初は、ひょんな事からであった。
『相手が居ねえんなら』
よった勢いで、誘惑してきた銀時に俺はそう答えた。
どちらもべろべろに酔って、その時のことは良く覚えてない。
ただ覚えているのは、感じたことの無いほどの強烈な快感と、銀時の髪から香ったシャンプーの匂い。
今まで、何度か女とはまぐあったが男の味は知らなかった。

それからは二人とも、あのときの心地を忘れられずにここまでずっと、体を重ねるだけの関係を続けてきた。
なんとなく二人で会う約束をたて、次は来週の火曜日…次は土曜日、次は…
初めて銀時を受け入れてから、どのくらい経つのだろうか。
それからずっと、恋人関係にはなっていない。
いや…これからもそうかもしれない。
それに焦りともどかしさを感じるのは…

そう、俺だけだろう。


「…?土方…?」
突然たちどまった俺を見て、数歩歩いた先から怪訝そうな顔を銀時は向けた。
いけねえ、考え込んでしまった。
そうだ。
俺がこいつを幾ら想おうと、それは届かない。
いつの間にか、こいつを好きになってはいても、こいつはそうじゃない。
銀時にとって、俺はただの性欲処理道具。
考えたくもないが、そうなのだ。だってずっと、そういう関係を続けてきたのだから…。
銀時から視線を反らし、おれは奴の前を歩きだした。
「…何でもねえ。さっさと行こうぜ。」

俺は、銀時が好きだ。
前からずっと。いや…実際好きになったのは、体を重ねてからの事だ。
初めてこの気持ちに気付いたときは、自分が気持ち悪くなった。
男相手、というところでもあるし、自分のこんな乙女ちっくな感情にもだ。
しかし、もう好きなものは仕方ない。
ひたすら、隠し続けた。今もだ。
俺は、銀時の優しさがすきだ。性欲処理対象の俺にさえも、体を気遣ってくれる。
他にも、たくさんたくさん大好きだけれど、何よりも逃したくないのは、奴の体だ。
こんな自分が憎ましくもあるが、仕方ない。やつ以外と体を重ねるなんて、考えられない。
俺が、奴に思いを伝えたところで、気持ち悪がられるだけ。
そして俺とは二度と体を交わらせないだろう。
俺たちは、性交以外に会うこともない。だから顔を見ることもほとんど無くなるだろう。
それは辛すぎる。
なら、今までどうりの関係を続けて、交わって、また会う約束をすればいい。
そう、奴が居なくなる位なら、もうこんな関係のままでも良いのだ。
ずっと、この関係を続けられる。銀時の味もずっと味わえる。
俺が気持ちを我慢できている限り…それは続く。
そう、そのはずなのだ。

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