『灰色の運命』
□プロローグ 運命の光
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C.E.73
オーブ
ロゴスのリーダー、ロード・ジブリールを匿い、身柄を明け渡さないオーブと、武力を行使してでもジブリールの身柄を確保しようとするザフトとの戦いは、『フリーダム』と『ジャスティス』の登場で更なる混乱が起きていた。
シン「クソッ! 邪魔すんな! 裏切り者ッ!!」
シン・アスカの駆る機体、デスティニーはビームサーベル形態のフラッシュエッジ2を目の前の深紅の機体───インフィニットジャスティス(以後∞ジャスティス)に降り下ろした。
アスラン「クッ!」
∞ジャスティスはビームシールドを展開し、デスティニーの攻撃を防いだ。
アスラン「シン! お前は一体何を撃とうとしているのか、分かっているのか!?」
シン「ああ! 分かっているさ! 俺が撃とうとしているのは、ロゴスのリーダー、ロード・ジブリールと、その身柄を明け渡さないオーブだ!!」
パリィィィィィィィィィィィィ…!!
シンは『SEED』を発現。
デスティニーのスラスター出力を上げ、∞ジャスティスを押した。
アスラン「ぐぅ?! だが、ジブリールは今、カガリ達が捜している!」
シン「ハッ! どうせ取り逃がす癖に!」
アスラン「何!?」
シン「それ以前にな、ジブリールをさっさと此方に明け渡しとけばこんな事にはならなかった筈だ!! オーブには頭の中におが屑が詰まった奴しか居ないのか?!」
アスラン「なっ…!?」
アスランはシンの言葉に怒りを覚えつつも、同時に納得もし、動きをほんの少しだけ止めてしまった。
シン「てやぁ!!」
ドガッ!!
アスラン「ぐあっ!?」
デスティニーは∞ジャスティスの頭部に蹴りを入れ、蹴り飛ばした。
シン「…!」
シンは蹴りの直前に∞ジャスティスのシールドを見た。
∞ジャスティスのビームシールド発生機には、先程デスティニーのフラッシュエッジ2での攻撃で付けた傷があった。
シン「(これならイケる!)墜ちろ!!」
デスティニーは蹴りと同時にビーム砲を展開し、ビームライフルと同時に∞ジャスティスに狙いを付け、シンはトリガーを引いた。
ドゥンッ!!
アスラン「ハッ!?」
∞ジャスティスは咄嗟にビームシールドでビームを防いだ。
だが、シンの狙いは別にあった。
シン「そこッ!」
ドゥン!
デスティニーのビームライフルからビームが放たれ、∞ジャスティスのビームシールド発生機の傷に直撃し、更にビームは貫通し、左肩も貫通した。
アスラン「えっ…!?」
余りの出来事に驚愕するアスラン。
ドガァアアアアアアアアアアアアアン!!!
アスラン「ぐああああああああああああああッッ!!??」
シールドと左腕が爆発し、∞ジャスティスは吹っ飛んだ。
キラ「アスラン!?」
レイ「隙だらけだ!」
レジェンドの攻撃は、ストライクフリーダム(以後Sフリーダム)の左足を撃ち抜いた。
キラ「し、しまっ…!?」
ドガァ!!
キラ「うわぁあああああああああああああッッ!!??」
左足が爆発し、吹っ飛ぶSフリーダム。
実はこのSフリーダム、デスティニーのアロンダイトを白刃取りで受け止め、レールガンで攻撃した際、デスティニーは攻撃を受けつつ、ビームライフルでSフリーダムの右腕を撃ち抜いたのだ。
デスティニーはこの戦闘でフラッシュエッジ2とアロンダイトを失った為、補給する為にミネルバへ一時帰艦したが、Sフリーダムはザフトのオーブへの侵攻を阻止する為にそのまま戦わざるを得なかった。
シン「フリーダム!? いや、今はアイツを撃つ!」
シンは一瞬Sフリーダムの方を見たが、直ぐ様目の前の∞ジャスティスの方を見た。
シン「止めだ!」
デスティニーはビーム砲を構え、∞ジャスティスをロックオンした。
シン「これで終わりだ!!」
シンはトリガーを引いた。
ドゥンッ!!
放たれた業火。
アスランにはそれがスローモーションに見えた。
アスラン「(終わるのか…? 此処で…? いや、俺達は議長の野望を止めなければならない。だから、俺はやられない!!)」
アスランは其処で『SEED』を発現した。
アスラン「うおおおおおおおおおおおおおおおおおおッッ!!!」
∞ジャスティスは有り得ない動きでビームを避けた。
アスラン「え…?」
だが、アスランは視界の端で『ビームの先』を見てしまった。
ビームの先には、『国防本部』があった。
アスラン「あっ…うわぁあああああああああああああ!!!???」
アスランの叫びも空しく、ビームは吸い込まれる様に国防本部に向かい、そして───
ドガァアアアアアアアアアン!!!!!!
ビームは国防本部に着弾、国防本部は爆発した。
アスラン「あ…ああっ…!?」
国防本部にはカガリがいた筈では?
アスランはそう考えれば考える程、悲しみに暮れた。
シン「あれは…? オーブ軍がバラバラになっている…?」
一方のシンは爆発炎上する国防本部を見ていたが、周囲の状況を見て、理解した。
シン「そうか、そういう事か。」
シンは妖しい笑みを浮かべた。
シン「まさかオーブ軍の国防本部を撃ったとは…。」
ドドドドドドドドドド…
シン「! 何の音だ?」
シンは音のする方を見た。
シン「…シャトル…?……ハッ! まさか!? ジブリール!」
オーブから宇宙(そら)に向かって発進したシャトル。
その中にはジブリールが乗っていた。
シン「チッ、往生際の悪い奴だ! だけど!」
シンはビーム砲のリミッターを解除した。
ビーム砲の砲口にはビームの光が漏れて陽炎が立ち込め、砲身には過電流によって電気が流れ、高熱によって煙が出ていた。
シン「チャンスはたったの一度。撃てば確実に壊れる。それでも!」
デスティニーはシャトルをターゲティングした。
ピピピピピピピピ…
シン「ハァ…ハァ…ハァ…ハァ…」
シンは息を整えながら慎重に狙いを付けていた。
他のMSや艦艇からビームやミサイルがシャトルに向けて放たれていたが、シャトルには掠りともしなかった。
シン「(落ち着け…! これで外せば全部終わりだ…! 一か八かの一発勝負だ!)」
ピピッ!
遂にシャトルをロックオンした。
シン「ロード・ジブリール! これで終わりだ!!」
シンはそう叫び、トリガーを引こうとした。
ビービービービー!!
シン「!? 下?!」
ロックオンアラームが鳴り、シンは下を見た。
アスラン「うぉおおおおおおおおおおおおおおお!!!!!!」
連結したビームサーベルを持ち、デスティニーに迫る∞ジャスティスがあった。
アスラン「お前が! カガリをぉおおおおおおおおお!!!」
シン「クッ! 邪魔すんな!」
デスティニーは後退しながらビームライフルで撃つが、∞ジャスティスを止めることは出来なかった。
シン「チッ! レイ!」
レイ「どうした?」
シン「この裏切り者を任せた! 俺はジブリールを!」
レイ「分かった!」
レジェンドはデスティニーと∞ジャスティスの間に割り込んだ。
アスラン「邪魔をするなぁあああああああああああああ!!!」
レイ「戦場で私情など!」
レジェンドは時間稼ぎの為にビームシールドで∞ジャスティスの攻撃を受けた。
レイ「シン! 終わらせろ! 全てを!!」
シン「ああ!」
シンはそう言って再びシャトルをロックオンした。
シン「そうさ…! こんな戦争なんて…! 終わらせてやる!!!」
シンはトリガーを引いた。
アスラン「おおおおおおおおおおおおおおおお!!!!!!」
レイ「ぐっ?!」
∞ジャスティスはレジェンドを弾き飛ばし、デスティニーに向かった。
レイ「シン!!」
シン「!」
この時、シンには二つの選択肢があった。
∞ジャスティスを迎撃するか、自らの命を省みずにシャトルを撃つこと。
そして、シンが選んだ選択肢は───
シン「コレでぇッッ!!!」
キィィィィィ……ドォオオオオオオオオオ…!!!
ビーム砲から極大のビームが放たれ、ビームが向かった先は───
ジブリール「!!?」
極大のビームは瞬時にシャトルを飲み込み───
ジブリール「せっ…世界は…我々の手で…───」
ドガァアアアアアアアアアンッッ!!!
シャトルは爆散した。
シン「うおおおおおおおおおおおおおおおッッッッ!!!」
デスティニーはビーム砲を下に傾けた。
シン「アスラァァァァァァンッッッッ!!!!!!」
極大なビームは∞ジャスティスに向けられた。
アスラン「シィィィィィィンッッッッ!!!!!!」
∞ジャスティスは僅かな動きでビームを避けた。
だが、機体の左半分は熱線で溶け、コクピットが丸見えになった。
だが、それでもその勢いは止まる事はせず───
ザンッ…!!
∞ジャスティスはビーム砲を斬り、そして───
バチィッッ!!!
∞ジャスティスのビームサーベルがデスティニーの胸部を貫いた。
アスラン「これでッッ!!!」
シン「まだ、俺はッッ!!!」
アスラン「ッ!?」
シン「俺はまだ死んでいない!!!」
アスラン「ハッ!?」
アスランはデスティニーの右腕が動いたのに気が付いた。
が、時既に遅かった。
シン「先に逝けぇええええええええええええええええええ!!!!!!」
デスティニーは右手の掌底を∞ジャスティスのコクピットに押し当てた。
アスラン「しっ…しまっ!?」
デスティニーの掌底に装備しているデスティニー最強の武器、パルマ・フィオキーナが放たれた。
ドゥン…ッ!!
デスティニーの一撃は∞ジャスティスのコクピットを貫き、爆散した。
シン「ぐっ…?!」
デスティニーは∞ジャスティスの攻撃で胸部ごとバックパックのバーニアを貫かれた為、海中に落下した。
レイ「シン?! どうした!? 早く脱出しろ!!」
シン「ゴメン…、どうやら無理みたいだ…。」
レイ「何!?」
シンは正面のモニターを見た。
∞ジャスティスの爆発は核爆発であり、その強大な爆風と熱線は、中心部にいたデスティニーの装甲に大ダメージを与えるには十分過ぎた。
モニター、即ちコクピットハッチはその熱線と爆風によって歪み、脱出不可能となった。
シン「チッ、此処までか…。」
シンはノイズの走るモニター、火花が飛び散り、スパークの走る計器を見ながら、そう呟いた。
だが、その顔には絶望や後悔など無く、満足げな表情だった。
シン「まあ…出来るだけの事は出来たんだ…、これで戦争が終われるなら俺の命なんて安いモンだろ。」
通信機器が完全に壊れ、通信が取れなくなった状態で呟くシン。
シン「まあ…できればこの世界がどうなってゆくか見てみたかったな…。」
『出来るよ。』
シン「え?」
シンの目の前に光の粒子が集まり、人の形になった。
シン「…ステ…ラ…?」
ステラ『シンにはね、『新しい世界』に行ってもらいたいの。』
シン「新しい世界…? どうやって行くんだい?」
ステラ『大丈夫、信じて。』
すると、ステラから光が出て、コクピットを包み込んだ。
シン「うわっ!?」
ステラ『シンはその世界の行く末を『革新者』と一緒に見てほしいの。』
シン「世界の…行く末? 革新者? 一体どういう意味なんだ? どうしてステラは此処まで俺に生きていて欲しいんだ?」
ステラ『シンはステラに明日をくれた。だからステラ、守るから。シンを。』
ステラから更に光が出て、コクピットから次第にデスティニーを包み込み始めた。
シン「ステラ…。」
ピカァァァァァァァァァ…
レイ「何だ!? あれは…?」
光はデスティニーを完全に包み込み、更に海の上まで出て、幻想的な光景を生み出した。
レイ「爆発ではない…? しかし…何だ…この温かさは…? シン…お前は…」
レイはその光が消えるまで見ていた。